研究課題/領域番号 |
24686095
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
姫野 武洋 東京大学, 工学(系)研究科(研究院), 准教授 (60376506)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 宇宙輸送 / 自由表面流 / 相変化 / 極低温流体 / 数値流体力学 / 表面張力 / 微小重力 / 液体ロケット |
研究概要 |
スロッシング実験では、昨年度に引き続き、鉛直方向加振加振に伴って円筒容器内に誘起される液面挙動の観察と気液界面を通じた熱伝達促進効果の計測実験を実施した。気体と異なる温度の不揮発性液体(シリコンオイル)を用いることで、スロッシングと温度場が連成する流れ場を創出し、液面挙動の高速度撮影と温度・圧力の同時計測を行った。ベッセル関数で記述される液面の固有振動モードを再現性良く実現できるとともに、容器内圧力が、気体領域の内部エネルギー総和にほぼ比例する値を呈する原理に基づき、計測された圧力変動の時系列データから、気体側への入熱量を定量的に取得できた。加振波形を様々に変えたスロッシングに伴う界面熱伝達と相変化の促進効果を定量的に把握するとともに、数値解析の検証用にも適した、再現性のある実験データを取得できた。 また、極低温流体を用いた実験へ向け、高荷重電動アクチュエータを新たに導入し、ポリカーボネート製の密閉容器を格納した真空断熱槽を水平方向に加振できる実験系を構築し、常温流体を用いた予備実験を実施した。また、密閉容器へ常温加圧気体を導く系統と電気ヒーターを増設し、密閉容器内の気液間に比較的大きな温度差を課せるよう計測系の改良を行った。 一方、界面張力卓越環境における液面観察実験では、比重のほぼ等しい非混和性二液体を用い、界面張力が卓越する無重量環境を模擬した液面形状観察実験も実施し、数値解析の検証用にも適した実験データを取得できた。 数値解析については、報告者らが開発している自由表面流解法(CIP-LSM)に対し、気液界面での蒸発・凝縮を考慮できる相変化モデルを考案のうえ実装した。伝熱に伴う複数気泡の成長と浮力による離脱を実験的に観察した既往研究に対応した数値的模擬を試み、新たに構築された数値解法が沸騰を伴う自由表面流れに適用できる見通しを得た。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
実験では、常温流体を用いたスロッシング実験により、線型応答範囲および強非線形性を呈する両方の場合について、液面変形と界面熱伝達・相変化が連成する現象を再現性良く実現できる見通しを得た。極低温流体を用いたスロッシング試験装置もほぼ完成している。界面張力卓越環境における液面観察実験についても所期のデータを取得できた。験数値解析でも、数値流体解析を安定に行える相変化モデルを考案できた。
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今後の研究の推進方策 |
当初研究計画の通り極低温スロッシング実験を着実に進める。併せて、研究協力者と共に微小重力実験で取得される沸騰二相流動現象のデータ解析に協力する。また、界面張力卓越環境における液面観察実験については、研究協力者が実施する落下塔実験に対応した数値解析を実施する。当初研究計画では、研究代表者所属機関の落下塔を用いた実験を実施するとしていたが、より長秒時の落下時間を獲得できる設備を使った計画へ変更する。 数値解析手法については、適切な汎用ライブラリを導入して数値解法の高速化を進めるとともに、複雑形状流路内部の熱流動現象解析への適用を可能とするため、多領域接続への拡張を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
高荷重電動アクチュエータの試運転が当初予定より若干遅れたことにより、試運転の後に導入を予定していた任意波形入力モジュールの調達が次年度にずれ込んだため。 高荷重電動アクチュエータの負荷機能である任意波形入力モジュールを調達し、極低温スロッシング試験用加振装置を完成させる。
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