研究実績の概要 |
藻場再生技術の確立に向けて、「技術や効果に関する課題」と「導入設計手法に関する課題」に対して4つサブテーマに沿って研究を実施した。 「技術や効果」の課題では、異なる腐植様物質を製鋼スラグと混合した際の鉄溶出特性と海藻生育への影響に関する評価を行った。海藻連続培養装置を用いて海藻生育と鉄溶出特性の関係性を検討・評価したほか、前年度に引き続き北海道増毛町での鉄溶出(水槽)試験を行った。培養試験では、市販のフミン酸と製鋼スラグの混合割合を変化させた試料、更にリンゴ剪定枝由来の堆肥を添加した試料による培養および鉄溶出特性評価によって、鉄と錯形成する有機物質の存在とその種類が鉄溶出と海藻生育促進に重要であることが確認された。また標準鉄(塩化鉄(III))にフミン酸、サリチル酸、クエン酸を個別に添加した際の海藻生育の違いを評価した結果、有機物質の違いによる生長率の差が示され、鉄化学種の違いによって海藻生育促進に差が生じることが示唆された。 「導入手法」の課題では、海藻群落形成モデルの改良と経済評価・導入設計手法の検討を実施した。モデルについては、北海道日本海側を対象として、実海域の栄養塩データや光合成試験の結果を踏まえて、栄養塩(N, P)と鉄の海藻生長への関係性を検討し、更なる改良を行った。また技術導入設計手法の確立に向けて、全国各地の藻場再生実証試験の効果に関する総合的な評価を行うための指標・項目を整理した。そして北海道増毛町での実証試験効果について、それらの項目に基づき、ウニの漁獲変化など経済評価も含めて、体系的な検討・評価を行った。また三重県志摩市および長崎県対馬市において、導入手法の確立と北海道以外の海域への技術適用に向けた海域環境調査を引き続き実施した。三重では、調査結果からその海域における最適な技術導入箇所を検討し、技術導入の事前調査として評価すべき項目のまとめを行った。
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