研究課題
若手研究(A)
線虫C.elegansのゲノムDNAのデータベースに公開されているDNA配列情報や、温度受容ニューロンで発現する遺伝子プロファイルから、神経伝達に関わる関連遺伝子をピックアップし、その遺伝子が欠損している変異体などの、温度応答テストを行い、温度応答に異常をもつかを検証した。その結果、幾つかの変異体で異常が観察された。温度刺激を与える前後や、刺激を与えてから数時間後のRNAを単離するための検討実験をおこなった。既に単離されている、温度刺激により発現変動する遺伝子にかんしては、温度学習に関わる変異体(インスリン経路の変異体)において、それらの遺伝子の発現変動が起きているかを測定した。具体的には、リアルタイムPCRをつかい、変異体や野生株において各遺伝子の発現変動レベルを定量化した。その結果、幾つかの遺伝子に関して顕著に発現レベルの変化が観察された。また、温度応答の実験系をもちいて、変異原EMSを利用し、順遺伝学的に温度応答に異常を持つ変異体を単離し、野生株間の1塩基多型を用いて責任変異のマッピングをおこなった。上記の解析に加え、温度学習変異体にかんして、カルシウムイメージングをつかい、既知の温度走性回路におけるシナプス伝達の異常の有無を測定し、相反性のシナプス伝達の学習への関与を解析した。さらに、相反性シナプス伝達が、軸索内でどのようなトポロジーで行なわれるかを調べるために、温度走性回路におけるシナプス局在変異体をもちいて、温度走性行動とシナプス局在を相関付けた解析をおこなった。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画に従い、計画通りに研究が進んでいるため。目的とした神経伝達に関わる変異体で温度応答の異常が観察されたため。温度刺激前後に発現変動する遺伝子に関して、温度学習の変異体において、その変動が起きているかを検証したため。温度学習の変異体において相反性シナプス伝達回路の異常が見られたため。区画化されたシナプス局在と行動との関係を調べることができたため。
前年度のDNAマイクロアレイ解析から単離した遺伝子のうち、新規の遺伝子に関しては、GFP遺伝子との融合遺伝子を作成し、細胞内局在の解析を行う。シナプスに局在しているものに関して、細胞内カルシウムや膜電位のイメージングにより、生理的機能を解析する。前年度に遺伝学的解析により単離された変異体に関しては、野生株間の1塩基多型(SNP)をつかい、責任遺伝子の同定を行なう。
初年度において光学機器や研究材料を購入し、研究を遂行できる状況となったため、本年度はより効率的に研究を遂行するために研究員を雇用し研究の遂行に努める。研究に必要な材料か海外からの輸入品であったため、メーカーへの年度内の納品が間に合わず、若干の未使用額が生じた。
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