研究課題/領域番号 |
24687002
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研究機関 | 甲南大学 |
研究代表者 |
久原 篤 甲南大学, 理工学部, 准教授 (00402412)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 線虫 / 神経回路 / シナプス / 温度応答 |
研究概要 |
本研究では、神経情報伝達を含む線虫の温度応答の情報処理メカニズムを解析し、神経情報処理の新しい分子生理システムの同定を行っている。さらに、線虫をモデルとして、温度応答に関わる新規の分子生理機構をシンプルにとらえるための解析系の創出とその分子神経遺伝学的解析をおこなっている。 線虫C. elegansにおいて、前年度に引き続き、温度刺激を与える前後や、刺激を与えてから数時間後のRNAを単離するための実験をおこない、DNAマイクロアレイ解析の試行回数を重ね、温度刺激により発現変動する遺伝子の候補を多数同定した。 既に単離されている温度刺激により発現変動する遺伝子にかんしては、温度応答神経回路上で機能する変異体における発現変動の解析をおこなってきたため、今回得られた温度応答遺伝子に関しても、リアルタイムPCRをつかい、変異体や野生株において各遺伝子の発現変動レベルを定量化した。昨年度までに、順遺伝学的に温度応答に異常を持つ変異体を単離したため、その責任遺伝子のマッピングを、野生株間の1塩基多型(SNP)をつかいおこなった。具体的には、X染色体の中央付近にマッピングされた。 新規の温度感知神経細胞の候補を明らかにしたため、従来の温度神経回路と相反性神経伝達との関係を、細胞内カルシウムにより、生理的機能を解析した。 前年度の解析から単離した温度応答のシナプス伝達に関与していると考えられる遺伝子に関して、GFPやRFP遺伝子との融合遺伝子を作成し、細胞内局在の解析を行った。シナプスに局在しているものに関しては、細胞内カルシウムや膜電位のイメージングにより、生理的機能を解析した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の計画に従い、計画通りに研究が進んでいるため。温度情報伝達の神経伝達の新規分子が多数単離されたため。温度刺激前後に発現変動する遺伝子と、温度応答の既知の遺伝子との相関性を得たため。新しく同定した温度応答ニューロンのシナプス伝達と神経回路の関係を捉えたため。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに同定した遺伝子の機能に応じて、関連遺伝子変異との遺伝学的優位解析から機能を決定する。本年度にDNAマイクロアレイ解析から単離した遺伝子のうち、特に分泌性の分子に絞って、GFP遺伝子との融合遺伝子を作成し、細胞内局在の解析を行う。神経ネットワーク情報処理に関わる場合は、細胞内カルシウムイメージングにより、生理的機能を解析する。本年度に引き続き遺伝学的解析により単離された変異体に関しては、野生株間の1塩基多型(SNP)をつかい、責任遺伝子の同定を行なう。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度はより効率的に研究を遂行するために研究員を雇用し研究の遂行に努めたため、興味深い結果が得られた。当初計上していた研究に必要な機器が最新の技術の発展により、機能が相対的に低くなってしまったため、次年度での購入を検討した結果、その分の未使用額が生じた。 カルシウムイメージングを行う際に線虫の動きが予想以上に大きいため、その動きをとらえるためのソフトウェアを計上する。7月にC. elegansの国際学会が行われるため、その旅費を大きく計上する。次世代DNAシークエンサーを用いた解析を委託して行う予定のため、その経費をその他に計上する。多量の線虫をあつかった解析の補助業務を行う人物の謝金を計上する。
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