研究課題
研究の目的と当該年度の研究計画に則り、研究代表者が長期滞在していたカナダブリティッシュコロンビア大学が有する (Malcolm Knapp Research Forest:MKRF)と京都大学北海道研究林において、森林から河川に供給される陸生昆虫類の季節性を人為的に操作する大規模野外操作実験を行った。すなわち、寄生者を介した陸生昆虫の河川への供給量やそのタイミングに関するこれまでの知見を元に、市販のミールワームとヨーロッパイエコオロギを早期(6-8月)と後期(8-10月)にそれぞれ投入する試験区、および対照区を設けて、その後の河川生物群集(魚類、底生動物群集、藻類)、および生態系機能(水質、落葉分解速度)を継時的に調べた。その結果、MKRFの河川では、魚類は早期に投入されたミールワームにより強く反応して、個体群の現存量を大きく増大させた。この魚類の現存量の増大は、底生動物群集への影響を通して、落葉分解速度にまで影響を及ぼした。一方、既存の研究でよく報告されている栄養カスケード(魚類の捕食圧が底生動物類への影響を通して藻類の現存量に影響する)の改変は認められなかった。早期の資源補償を受けた処理区では、魚類が栄養塩回帰率(主にアンモニア)を高めることで、水質にまで影響している可能性が明らかになった。一方、京都大学北海道研究林で行った同様の実験結果については、現在取りまとめ中である。MKRFでの実験結果は、寄生者-宿主関係の多様化と関連して寄生者が宿主を河川に誘導するタイミングが変化すると、河川生態系の季節的な動態にも影響することを示唆する。さらに一般的に言うと、本研究は、気候変動等によってある生態系のフェノロジーが変化することが、隣接する他の生態系にも大きな影響を及ぼす可能性を示唆する初めての研究である。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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