研究課題
平成26年度は、統合国際深海掘削計画(IODP)第329次(南太平洋還流域)、および第337次(下北半島沖、海底下深部地層)掘削研究航海により得られ、炭素、窒素安定同位体を含む基質を添加して長期間の培養を行っていた試料について、試料からの細胞一次分離、セルソーターによる細胞特異的取り出し、導電性メンブレンへの捕集作業を多数の試料について実施した。それぞれの試料の中には1立方センチメートルあたり数百から数万細胞程度の微生物が含まれているが、試料の主な構成物は無機的な泥粒子や岩石であり、その中から微生物細胞を取り出すことは著しく困難を極めた。本研究では独自に作り上げた細胞分離手法と、それに続く微生物選択的な高速より分け手法(ソーティング)を用い、少数の微生物細胞を効率的に取り出すことでその後のNanoSIMSを用いた高感度分析を可能とした。分析の結果、地球上で最も栄養に乏しい環境と言われる南太平洋中心の環流域から得られた堆積物試料の中から、添加した様々な基質の取り込みを行う微生物細胞を検出した。これらの成果の元になった、本研究により構築した海底下微生物研究用手法は、海外の学会などにおいて高い評価を受けている。海底下生命圏試料はその取り扱いが非常に困難で、本研究と同様の分析を実施できる研究機関は殆ど存在せず、国際共同研究などを積極的に実施することで、これまでに明らかでなかった海底下生命圏の実像を明らかにするべく、様々な研究展開が期待できる。
3: やや遅れている
計画として設定した項目を平成26年度前半は順調に実施したものの、研究計画の実施に必要不可欠な二次イオン質量分析計の機械トラブルが発生し、平成26年度後期の大半で分析不可能な状況に置かれた。その為、二次イオン質量分析の後に実施することが必要であった分子生物学的実験や分離実験が計画通り実施できず、補助事業期間の延長を申請した。
引き続き、南太平洋環流、および下北半島沖の試料分析を継続し、分子生物学的実験などを通じて、微生物の代謝活性やその機能、特徴などに迫っていきたい。
研究計画の実施に不可欠な二次イオン質量分析計(NanoSIMS)が、機械トラブルのため平成26年度後期の大半で分析不可能な状況におかれた為、NanoSIMSの分析の後に実施することが必要であった分子生物学的実験、およびFISHなどの細胞特定、分離実験が計画通り実施できなかった。
NanoSIMSによって分析を行った海底下微生物に関する遺伝子増幅用の試薬、およびFISHなどに使用するプローブなどの核酸、細胞分離に使用する光学フィルター等の消耗品を購入する。また計画していた実験を行うことで得られる成果を発表するための旅費や英文校閲費として使用する。
すべて 2015 2014
すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 5件、 謝辞記載あり 4件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 5件) 図書 (2件)
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