研究課題
平成25年度までの研究計画から、X線結晶構造解析、紫外可視分光測定、二重変調クロロフィル蛍光測定、ESR測定といった様々な解析法を駆使することで、ヨウ素イオン(I-)によるPSII内のMn4CaO5クラスターの還元化とその立体構造変化を明らかにすることができた。PSIIの酸素発生反応が阻害されるI-濃度でESR測定を行うと、通常では観測されないMn由来のマルチラインシグナルが観測され、これは暗黒条件下で安定なS1状態から1電子還元されたS0状態を検出したと考えている。また、I-の結合サイトであるI-1において、陰イオンと静電的相互作用する317 Lys/D2の側鎖(アミノ基)が部分的にフリップしてI-と結合できない距離になっていた。これは、陰イオンを利用したプロトン放出機構が、陰イオンの違いによって変化することを初めて構造解析の観点から観測した事例である。さらに高濃度I-(120 mM I-)条件下では、PSII内部に三ヨウ化物イオン(I3-)がQBサイトに結合していることがX線結晶構造解析によって判明し、そしてI3-が電子受容体としての機能を持つことが紫外可視分光測定及び二重変調クロロフィル蛍光測定によって明らかとなった。これらの結果から、I-存在条件下ではPSIIの光化学反応によって様々なヨウ素種が形成され、PSIIの酸素発生反応を阻害していることが初めて明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
平成24年度から開始した「ヨウ素イオンによるPSIIの酸素発生阻害機構」(研究課題名:光化学系2複合体の構造生物学)に関して、必要な実験データの収集は終了した。今後は、これらの実験データをまとめ、論文投稿を行う。
これまでのデータをまとめ、共同研究者と綿密な議論を行い、論文投稿を進める。また、X線照射によるMn還元の問題が残っているため、より質の良いPSII結晶データの収集を行う。平成25年度において、Mn還元を抑えたデータ収集法で1.77 Å分解能の高分解能データを得ることに成功した。現在得られているヨウ素置換PSIIのデータは2.1 Åであり、このデータ収集法をヨウ素置換PSIIに応用することで、より質の良いデータを得ることが可能である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 7件) 学会発表 (7件) (うち招待講演 3件) 備考 (1件)
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