研究課題
バイオイメージングの発展により、組織や細胞におけるオルガネラの動態を容易に観察できるようになった。その一方で、透過電子顕微鏡(TEM)観察がほとんど行われなくなったため、オルガネラの超微形態は不明瞭な状態である。本研究では、モデル植物を用いて、1、試料を瞬時に固定する高圧凍結技法を改良・高度化し、動的オルガネラを含む高解像度で広域のTEM像を撮影し電算機上に再構築する基盤技術と、2、マルチスケール性を維持した高解像度TEM像上の細胞内構造物に位置情報を自動記録する基盤技術を開発し、組織・細胞におけるオルガネラの超微形態と分布、関連情報を閲覧可能なTEM像のマッピングシステムを構築する。そして、これら基盤技術を用いて、3、発生過程と環境刺激前後の細胞とオルガネラの超微形態を明らかにし、分化発生機構を解明する。今年度は2と3を中心に技術開発を行った。2、 TEMを外部PCから電子ビーム方向・試料位置・CCDカメラを制御するプログラムに改良を重ね、広域TEM像の自動撮影システムを構築した。本システムを用いて根端組織や培養細胞の最大4万枚のTEM像を完全自動で取得することに成功した。さらに、その撮影システムと自動結合プログラムを連動させること動物組織など細胞内構造が明瞭な部分の自動結合に成功した。この広域TEM像取得システムに関して論文にまとめ国内雑誌に発表した。3、タバコ培養細胞の増殖期・定常状態期の広域TEM像を取得し、細胞内輸送に関わるオルガネラが定常状態期には減少することがわかり、学会発表を行うとともに論文にまとめ、国際雑誌に投稿した。
2: おおむね順調に進展している
交付申請書に記載した通り1-2の技術検討および技術開発を行い、凍結試料作製法および超薄切片作製法を向上させるとともに、目標としていた数万枚におよぶTEM写真の自動撮影および自動結合に成功した。そして、これらの手法を論文にまとめた。また、開発したシステムを用いて、3の課題である培養細胞の広域撮影像を取得し、発生分化に関わる細胞内構造体の変化を明らかにした。
様々な器官や環境変化に曝した試料の広域に渡る凍結固定を向上させる工夫や技術を開発する。自動撮影システムおよび自動結合プログラムの精度を向上させる。自動結合が難しい場合、簡便に手動結合ができるシステムを構築する。撮影した広域高解像度TEM写真をWeb上で公開するため、所内内部公開サーバーを用いて、公開するWebの構築や表示するアプリケーションなど検討する。
超薄切片作製用ダイヤモンドナイフの消耗が想定より少なかったため。新規超薄切片作製用ダイヤモンドナイフの購入または再研磨を行う予定である。
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すべて 雑誌論文 (7件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (6件) (うち招待講演 2件) 備考 (2件)
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