研究課題
本研究ではアーキアの持つ多様で新しい生物機能を分離培養することにより解明することを目的としている。本目的を達成するため、培養が難しい未知アーキアの分離培養を 1.新規培養技術の利用 (環境工学分野の排水処理技術を参考にしたリアクター培養法)と、2. 環境微生物学分野における最先端の微生物機能推定技術(シングルセルレベルでの解析)を活用しながら進める。本年度(平成25年度)は、下降流懸垂型スポンジ (down-flow hanging sponge: DHS) リアクターで集積培養ができている硫酸還元依存型の嫌気的メタン酸化反応を行う微生物群集を対象に、シングルセルゲノム解析を行った。本リアクター集積培養系内には多種多様なバクテリアとアーキアが存在していることを16S rRNA遺伝子に基づいたクローン解析から同定している。それら多様な微生物の中で未培養アーキアであるMarine Benthic Group-D (MBG-D)アーキアに標的を絞り、シングルセルゲノム解析を進めることとした。MBG-Dの16S rRNAの配列に特異的なDNAプローブを用いてFluorescence in situ hybridization法によってMBG-Dアーキア細胞のみを光らせたサンプルを米国Bigelow Laboratory for Ocean Scienceにてシングルセルゲノム解析を行った。現在、得られたゲノム配列の解析を進めている。シングルセルゲノム解析に加え、本年度は水質浄化に関わる未知アーキアの培養を行うために、リアクター培養を開始した。培養後、16S rRNA遺伝子に基づいた解析を行ったところ、標的としていた未知アーキアが増殖していないことが判明した。そこで、培地やリアクターの運転条件を変更し、再度培養実験を行っているところである。
3: やや遅れている
水質浄化に関わる未知アーキアの培養実験を行った後、未知アーキアの分離・培養を行い、成果をとりまとめるところまで進む予定であったが、未知アーキアの増殖が確認できず、培養実験をやり直していることから、やや遅れているとした。
得られたゲノム配列の解析を進め、未知アーキアが利用可能な栄養源の推定を行う。リアクター培養により代謝活性が高まった微生物群集を植種源とし、シングルセルゲノム解析で利用可能と推定された栄養源を含む培地を用いて未知アーキアの分離を試みる。水質浄化に関与する未知アーキアの分離・培養についても達成すべく努力する。
水質浄化に関与する未知アーキアの培養実験が計画通り進まなかったため、標的としていた未知アーキアの解析に必要な試薬類を購入しなかった。そのために次年度使用額が生じた。
未使用分はシングルセルゲノム解析やFISH法による細胞検出を行うための試薬類の購入を予定している。
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すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 謝辞記載あり 2件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (5件) (うち招待講演 1件)
International Journal of Systematic and Evolutionary Microbiology
巻: 64 ページ: 812-818
10.1099/ijs.0.057547-0
Frontiers in Microbiology
巻: 4 ページ: -
10.3389/fmicb.2013.00361