研究課題
ユビキチン(Ub)は酵母からヒトまで広く保存されたタンパク質であり、鎖状につながった複数個のUb(Ub鎖)が様々な分子シグナリングにおいて重要であることが明らかになってきている。Ub鎖はUbのリジン、もしくはN末端のアミノ基を用いて形成されるが、どの残基を用いてUb鎖が形成されるかによってUb鎖の構造と機能は大きく異なる。細胞内のエフェクターがどのようにこのUb鎖を見分けているのかは近年大きな注目を集めている。申請者は、直鎖型ポリUb鎖特異的な合成を行うHOIP、HOIL-1L、SHARPINからなるユビキチンリガーゼ複合体LUBACの結晶構造決定を目指して、これまで多くの発現系を構築し安定な複合体の構築を目指していたが、昨年度、海外の他グループから結晶構造解析によりLUBACの直鎖型Ub鎖特異的合成メカニズムが明らかとされた。一方、直鎖型Ub鎖およびLys63結合型Ub鎖を特異的に認識し、NF-kappaBの制御に関わる脱ユビキチン化酵素であるCYLDについても平行して研究を行い、その結果としてCYLDと直鎖型、およびLys63結合型Ub2量体の複合体の結晶構造解析に成功した。結晶構造解析の結果から、CYLDによるUb鎖特異的切断メカニズムを明らかとし、さらに結晶構造情報をもとにした変異体解析の結果から、CYLDによる直鎖、およびLys63鎖の切断がNF-kappaB、およびJNKシグナル伝達経路の制御において重要な役割を果たすことが明らかとなった。
2: おおむね順調に進展している
昨年度、海外の他グループによりHOIPとユビキチンの複合体の結晶構造が決定され、LUBACによる直鎖型Ub鎖特異的な合成メカニズムが明らかとなり、申請者は研究計画の変更を余儀なくされた。しかし、直鎖およびK63結合型Ub鎖特異的な脱ユビキチン化酵素であるCYLDや、FAタンパク質群をDNA損傷箇所へと集積させるために必須のFAAP20による、Ub鎖認識メカニズムを結晶構造から明らかにすることができた。
昨年度、他グループによりLUBACによる直鎖型Ub鎖特異的な合成メカニズムが明らかとなったため、研究計画を変更する。申請者は今年度、LUBACの経路以外でのUb鎖認識メカニズムについての研究を実施する。具体的には、DNA修復に関わるユビキチンリガーゼ、RNF168のユビキチン結合領域による、Ub鎖の認識メカニズムを明らかとする。
他グループによりLUBACの結晶構造が決定されたため、計画に大きな変更が生じたため。消耗品の購入
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Retrovirology
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Scientific Reports
巻: 3 ページ: 3097
10.1038/srep03097.