研究課題/領域番号 |
24687012
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐藤 裕介 東京大学, 放射光連携研究機構, 助教 (50568061)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | X線結晶構造解析 / ユビキチン |
研究実績の概要 |
ユビキチン(Ub)は酵母からヒトまで広く保存されたタンパク質であり、鎖状につながった複数個のUb(Ub鎖)が様々な分子シグナリングにおいて重要であることが明らかになってきている。Ub鎖はUbのLys残基、もしくはN末端Met1残基のアミノ基を用いて形成されるが、どの残基を用いて形成されるかによってUb鎖の構造と機能は大きく異なる。細胞内のエフェクターがどのようにこのUb鎖を見分けているのかは近年大きな注目を集めている。 これまでの研究として、Met1結合型ポリUb鎖特異的な合成を行うUbリガーゼ複合体LUBACの結晶構造決定を目指していたが、2013年度海外のグループに先を越され、結晶構造解析によりLUBACのMet1結合型Ub鎖特異的合成メカニズムが明らかとされた。 一方、Met1結合型およびLys63結合型Ub鎖を特異的に認識し、NF-κBを制御する脱Ub化酵素であるCYLDについても平行して研究を行い、その結果としてCYLDとMet1結合型、およびLys63結合型Ub2量体の複合体の結晶構造解析に成功した。この成果は「Structures of CYLD USP with Met1- or Lys63-linked diubiquitin reveal mechanisms for dual specificity」というタイトルで、「Nature Structural & Molecular Biology」に掲載された。 また、DNA鎖間架橋の修復に関わるFAAP20のUb結合領域と、K63結合型Ub2量体の複合体の結晶構造解析に成功し、この成果は「Structural Basis for Ubiquitin Recognition by Ubiquitin-Binding Zinc Finger of FAAP20」というタイトルで、「PLOS ONE」に掲載された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2013年度、海外のグループによりHOIPとUbの複合体の結晶構造が決定され、LUBACによるMet1結合型Ub鎖特異的な合成メカニズムが明らかとなり、申請者は研究計画の変更を余儀なくされた。しかし、Met1結合型およびK63結合型Ub鎖特異的な脱ユビキチン化酵素であるCYLDや、FAタンパク質群をDNA損傷箇所へと集積させるために必須のFAAP20による、Ub鎖認識メカニズムを結晶構造から明らかにし、それぞれ国際的な学術誌にその成果を報告したため。
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今後の研究の推進方策 |
2013年度、海外のグループに先を越され、LUBACによるMet1結合型Ub鎖特異的な合成メカニズムが明らかとなったため研究計画を変更する。今年度の推進方策として、LUBACの経路以外でのUb鎖認識メカニズムについての研究を実施する。具体的には、DNA修復に関わるユビキチンリガーゼ、RNF168のUb結合領域による、Ub鎖の認識メカニズムを明らかとする。 また、ミトコンドリアの品質管理に関わる脱Ub化酵素USP30の結晶構造解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
海外のグループにより、HOIP・Ub複合体の結晶構造が決定されたため、計画に大きな変更が生じたため
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次年度使用額の使用計画 |
消耗品の購入
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