研究課題
若手研究(A)
本研究ではヒト小腸における鉄獲得の分子メカニズムを解明することを目的とし、鉄還元酵素Dcytbやトランスポーターの立体構造の解析を目指している。Dcytbの精製と結晶化に成功しており、X線回折実験を進めてきたが、構造解析に必要な分解能が得られていない。そこで、Dcytbとそのモノクローナル抗体フラグメントが結合した状態で結晶化する方法を検討した。膜タンパク質であるDcytbを可溶化するために加えている界面活性剤のミセルが結晶化の際に分子の相互作用を邪魔していることから、目的たんぱく質と抗体フラグメントを結合させて親水性領域の表面積が広げることで結晶内のタンパク質分子間の相互作用を安定化させることがねらいである。これによりX線回折分解能の向上が期待される。Anti-Dcytb IgGを含むマウス腹水からの抗体フラグメントの調製をプロテインAカラムによるアフィニティークロマトグラフィー、プロテアーゼによる抗体フラグメント化、陰イオン交換クロマトグラフィーの順でおこなった。その結果、純度の高い精製試料を得た。精製したDcytbと抗体フラグメントを混合してゲルろ過クロマトグラフィーによって抗体結合能の評価を行った結果、両者が複合体を形成した状態で溶出されたことから、高い親和性があることが確認できた。今後は抗体のフラグメントの際の回収率をより高めで結晶化に利用する事が可能である。また、界面活性剤の種類を検討していくことも合わせて行う。
2: おおむね順調に進展している
低分解能ながらDcytbの結晶が得られており、高分解能結晶化に向けたモノクローナル抗体を調製するためのハイブリドーマ細胞のスクリーニングが順調に進展した。
初年度に引き続きDcytb、鉄インポーターそしてエクスポーターの調製と結晶化を継続し、得られた結晶の回折データ収集・処理などの構造解析を進める。
高品質のタンパク質結晶を調製するためにモノクローナル抗体の調製や結晶化作業などを行う人件費および消耗品の購入に充てる計画である。次年度使用額については、抗体を得るために必要なマウス腹水化作業の一部が予定よりも遅延している状況であるため、次年度以降のマウス腹水の調製に使用する予定である。
すべて 2012
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