研究概要 |
細胞におけるタンパク質の膜組み込み過程は,すべての生物に共通した必須の機構である。本研究では膜タンパク質の機能発現システムを詳細に理解する為に,真正細菌のタンパク質の膜組み込みに関わる膜タンパク質YidC(内膜への組込みに関与),BamA(外膜への膜組み込みに関与)の立体構造を決定し,その構造に基づく機能解析を進める。膜組み込みに関わる各構成因子の立体構造情報は得られつつあるが,YidC,Ba飴のX線結晶構造解析の例は(ホモログも含め)未だない。申請者らはこれまでにThermus thermophilus由来のタンパク質膜透過膜組込みに関わるSec因子(SecA,SecDF,SecYE)の構造解析を達成し,Secトランスロコンを介した膜透過機構について新たなモデルを提唱した。この結晶構造解析と機能解析の経験と技術をYidC,BamAに応用させ,タンパク質の膜組み込みの分子メカニズムの可視化を目指す。本年度は,YidC,BamAのX線結晶構造解析を目指し,YidC,BamAの結晶化を進めた。YidC,BamAともに結晶化に成功した。 YidCについては,大型放射光施設SPrigr8におけるX線回折実験の結果,約2.5Å分解能のデータセットが得られた。空間群はP21に属し,格子長はa,b,c=44Å,60Å,58Åであった。今後,YidCの構造決定に向け,重原子を用いた多波長異常分散法により位相の決定を進める予定である。BamAについては,今後,さらに良質の結晶を得る為の結晶化条件の最適化を進める。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究において,YidC,BamAの結晶化が当初の計画よりも順調に研究できたため,当該助成金が生じた。YidCについては,構造解析の目処がついたため,今後機能解析を進める準備を整える。一方,BamAについては結晶化に成功したため,経費がかかる網羅的な解析は少し押控えていた。しかしながら,構造解析可能な分解能をえるためには網羅的に解析する必要性がでてきた。当該助成金を来年度の網羅的解析に使用する。
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