研究課題/領域番号 |
24687022
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
谷口 雄一 独立行政法人理化学研究所, 一細胞遺伝子発現動態研究ユニット, ユニットリーダー (90556276)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 1分子・1細胞生物学 / 生物物理学 / システム生物学 / 超高感度顕微鏡技術 / 微細加工技術 / 生命反応の物理 |
研究概要 |
本研究では、高次生物(酵母、ヒト細胞)において1つ1つの細胞の個性が生まれるメカニズムの解明を目指している。我々はこれまでに、原核生物である大腸菌を用いて、1細胞レベルでのタンパク質の発現を1分子レベルで、かつリアルタイムで定量化するシステムを開発し、細胞毎の遺伝子発現のばらつきが生まれるメカニズムを明らかにした(Taniguchi et al., Science, 2010)。しかしながら、真核生物のタンパク質の発現メカニズムは、より複雑である。特に、真核細胞には核が存在するため、mRNAの核外輸送など、様々なプロセスがタンパク質の発現に関与している。 我々は真核細胞における遺伝子発現のばらつきのメカニズムを明らかにするため、中途産物であるmRNAの発現を、最終産物であるタンパク質の発現と同時に、リアルタイムかつ1分子レベルで捉えるシステムの開発を目指した。mRNAを可視化するため、我々はウィルスのキャプシドタンパク質の一つであるPP7タンパク質を利用した。PP7は特定の配列のmRNA分子に結合できる性質を持っている。PP7を蛍光タンパク質と融合させた状態で発現させておき、一方で、注目する遺伝子の転写領域にPP7の結合配列をタンデムに繰り返したものを挿入しておけば、mRNAの発現と同時に多数のPP7が集まって強い蛍光スポットを生じるため、その数をカウントすればmRNAの計測を行える。 我々は実験系のテストのために、大腸菌にこのシステムを組み込んで、mRNAとタンパク質の同時発現計測を行った。計測からmRNAの分解時間は数分と求まり、タグ配列挿入の有無で分解時間は変わらないことが分かった。また、mRNAの発現と同期して、複数のタンパク質が突発的に発現する様子が観察された。現在は解析を行って1細胞内の転写と翻訳の相関性を定量化するとともに、酵母・ヒト細胞へのシステムの導入を進めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
初年度では大腸菌レベルでのmRNA計測を行う予定だったが、現段階でほぼ完成し、酵母・ヒト細胞への導入を行う段階まで研究が進展しているため。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画は現在のところ順調に進捗しており、今後も申請時の研究計画の流れに沿って研究を進めていく予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
基本的に申請時の研究方針に従って次年度の研究費を使用する。本年度においては、機種選定を次年度に行った方が適切と判断される物品があったため、基金分の研究費を次年度に持ち越しとしている。 次年度は、持ち越し分の物品の購入と、研究計画に沿った予算の執行を適切に行っていく。
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