研究課題/領域番号 |
24687022
|
研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
谷口 雄一 独立行政法人理化学研究所, 生命システム研究センター, ユニットリーダー (90556276)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 1分子・1細胞生物学 / 生物物理学 / システム生物学 / 超高感度顕微鏡技術 / 微細加工技術 / 生命反応の物理 |
研究実績の概要 |
本研究では、高次生物(酵母、ヒト細胞)において1つ1つの細胞の遺伝子発現特性を1分子レベルで、かつ全遺伝子レベルで調べるシステムの開発を目指している。前年までの研究により、細胞内で発現しているタンパク質を1分子レベルでイメージングするライトシート型蛍光顕微鏡システムの開発を行ってきた(PCT/JP2014/059883)。本年度においては、膨大な数の遺伝子を一挙に解析できるハイスループット測定システムの開発、並びに培養条件下で細胞の測定を行うための温度チャンバーの導入を行った。ハイスループット化を行うにあたり、代表者はレーザー加工機を用いてマルチウェルデバイスを設計・構築し、結果、数十遺伝子の発現動態を逐次的に解析する実験系を構築することに成功した。さらに温度調節チャンバーの導入により、高次生物の遺伝子発現の確率的ダイナミクスをリアルタイムに測定できるようになった。 代表者はさらに、モデル生物である出芽酵母の十数個の遺伝子をピックアップし、これらの発現過程を開発したシステムを用いて追跡することで、遺伝子発現ノイズの生成ルールとメカニズムを調べた。タンパク質の発現測定は、蛍光タンパク質であるVenusの配列をゲノムDNA内の注目する遺伝子のコード領域に挿入し、タンパク質発現と同期して行われる蛍光タンパク質の発現を顕微鏡で捉えることにより行った。この解析の結果、出芽酵母におけるノイズ生成の法則性が見えてきており、現在大腸菌との比較実験、並びに数理モデルを用いた解析を進めている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
計画では細胞内における遺伝子発現量のカウントのみを行う予定であったが、本年度の開発で温度チャンバーの導入に成功し、遺伝子発現量のダイナミクスを追跡できるようになったため。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は測定システムを用いて他の遺伝子群、あるいは他の生物種(分裂酵母、ES細胞等)の遺伝子発現解析を行うことで、より一般的な遺伝子発現機構の理解に迫りたいと考えている。また本研究では、遺伝子発現ダイナミクスの解析が新たに可能となり、新たな解析の可能性が見えてきた。ダイナミクス情報の解析・応用のための方法論について研究プランを練りたいと考えている。
|
次年度使用額が生じた理由 |
本年度においては、多色蛍光観察装置を用いて出芽酵母の遺伝子発現量の相関解析を行う予定であったが、蛍光観察に用いるレーザーに不具合が生じたために当初の実験計画を変更したため、未使用額が生じている。
|
次年度使用額の使用計画 |
このため、発現量の相関解析を次年度に行うこととし、未使用額はその経費に充てたいと考えている。
|