研究課題/領域番号 |
24687026
|
研究機関 | 国立遺伝学研究所 |
研究代表者 |
北川 大樹 国立遺伝学研究所, 新分野創造センター, 特任准教授 (80605725)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 中心小体 / 中心体 / 細胞分裂 / 微小管形成中心 / 染色体不安定化 |
研究概要 |
中心小体複製のライセンス化、すなわち細胞周期ごとに一度だけ中心小体の複製が起こる事を保証し、過剰な複製を抑制する制御機構の実体は明らかにされていない。中心小体の基底部にあたり、最初に構築され始めるカートホイール構造の形成に関与する因子のスクリーニングを行い、その過程に必須であるSTILの結合因子として同定したRBM14が中心小体構成因子群のアッセンブリーを負に制御している可能性を見出している。これまでは、新規の中心小体は母中心小体近傍で形成されることが定説であったが、我々は内在のRBM14をRNAiにより発現抑制するとSTIL-CPAP複合体形成を介して細胞質中において中心小体の前駆体が形成され、その中の一部がSAS-6などのカートホイール構成因子を後に取り込むことで中心小体様の構造体として成熟/機能することを明らかにした(de novo中心小体形成)。さらには、RBM14の機能としてS phase arrestなどにより過剰複製される中心小体形成を抑制すること、canonicalな中心小体形成にはほとんど関与しないことなどを新たに見出し、RBM14がde novoや過剰な中心小体形成を特異的に抑制するシステムに寄与することを明らかにした。通常、中心小体の構成因子はそのほとんどが細胞質中に存在しており、複製期において中心体に局在することが知られていたが、これまで本研究で得られた知見はRBM14が細胞質中において中心小体構成因子群が異所的に複合体/構造体を形成しないように抑制し、新規の中心小体形成が母中心小体近傍でのみ起こるように制御している可能性を示唆している。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
中心小体de novo合成に介在する分子機構の解析を詳細に行い、通常の中心小体複製経路との類似点、相違点に関して明らかにすることを達成した。また、de novo合成された中心小体前駆体、その後の成熟した中心小体様構造の構造生物学的解析を行い、段階的な構築過程を示した。さらに、高解像度のライブイメージングを導入することで、中心小体de novo合成の染色体分配への影響に関しても解析し、細胞がん化への寄与の可能性に関しても考察することができた。以上の結果は原著論文として投稿中であり、当研究分野の裾野を広げることが期待される。
|
今後の研究の推進方策 |
中心小体de novo合成に関しては、新規に同定した因子であるRBM14に結合するRNAを同定し機能解析を行うこと、またRBM14-STIL複合体の構造生物学/生物物理学的解析を行うことで両者の機能がどのように制御されているのかを明確にする。さらには、この経路を介して形成された中心小体様構造体が実際に細胞がん化とどの程度密接に関与するのか、がん患者由来の細胞株や検体サンプル中にまずその存在があるのか、同定したde novo合成制御因子群の発現量の検討など関連施設、研究機関との共同研究も視野にいれた方向性を模索することを予定している。 また、通常の中心小体複製時に新規に形成される中心小体が、一つの母中心小体に対し唯一に限定される分子機構に関して解析を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度に遂行された実験が計画されていたよりもスムーズに進み、換算されていた消耗品費の未使用分が次年度使用額として派生した。 次年度の研究費と合わせ、遺伝子関連実験試薬、蛋白質関連実験試薬、培養細胞実験試薬などを購入するための物品費として使用する予定である。
|