研究課題/領域番号 |
24688003
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
本勝 千歳 宮崎大学, 農学部, 准教授 (30381057)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 園芸学 / 果樹 / カンキツ / 倍数性 / 非還元花粉 |
研究概要 |
今年度は,現在進めている花粉一粒のジェノタイピング法を確立させるために,さらにSSRマーカーの選抜を進め,‘西内小夏’におけるヘテロ性,ピークの明瞭さなどを考慮して,最終的に供試した47マーカーから,9マーカーを選抜した.昨年度に最適化したDNA抽出法により,花粉一粒からDNAを抽出し,選抜した9マーカーによる‘西内小夏’花粉一粒のジェノタイピングを試みた.その結果,分析した56花粉の中で,全てのマーカーにおいて単一の対立遺伝子のみを示すものと,同一遺伝子座上の2つの対立遺伝子が両方検出されるものが見られた.そこで,分析に供試した花粉粒の大きさと遺伝子型との関係についてさらに詳細に検討したところ,直径42μm以下の花粉粒では単一対立遺伝子のみしか検出されなかったことから,これらは通常の減数分裂によって生じた半数性還元花粉であると判断し,この大きさ以上の花粉であれば非還元花粉であることが示唆された.これらのことを考慮し,43μm以上の巨大花粉において,選抜したマーカーによる解析を行い,特に同一の連鎖群上に存在するとされる6マーカーについて見たところ,解析した全個体に対して,ヘテロを保持している個体の割合が,全てのマーカーにおいて50%以上であった.また,この‘西内小夏’の非還元花粉を使用した倍数性個体の作出の試みにおいて,本年度はハッサクを種子親に交配したものの中から,三倍体2個体,四倍体1個体を獲得できた.また,普通系ヒュウガナツ,‘西内小夏’,早生系ヒュウガナツを種子親に‘西内小夏’を交配した未熟胚の救助培養時のオーキシン添加効果について検討した.オーキシン濃度の明確な効果は確認できなかったが,これらの組み合わせから合計7個体の三倍体,1個体の四倍体が獲得できた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究はヒュウガナツ‘西内小夏’の非還元花粉形成のメカニズムに対する知見を得ること,ならびにそれを利用した倍数性個体の獲得を目的としているが,今年度は花粉一粒の遺伝子型情報を獲得できたことと,救助培養により倍数性個体を獲得していることから現在のところ順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
今後については,花粉一粒を用いたジェノタイピングについては,ある程度技術的には確立されてきたが,さらに効率を上昇させたいと考えている.そのために,全ゲノム増幅などの効果を検討したい.そして,さらに分析供試個体を増やし,各マーカーの遺伝様式から‘西内小夏’の非還元花粉形成過程を推察したい.また,‘西内小夏’の減数分裂過程の観察による組織学的調査についても行いたい.倍数体個体の育成については,引き続き‘西内小夏’花粉を受粉することにより,‘西内小夏’由来の様々な倍数性個体を獲得し育成する.また,非還元花粉形成能力の遺伝様式を調査するためにハッサクと‘西内小夏’を正逆交雑することによって得られた二倍性後代を得ており,引き続き育成する.また,モデル植物で非還元花粉形成に関係することが示されている,AtPS1とJASONの各遺伝子のヒュウガナツにおけるホモログを獲得したので,それらの発現解析を行いたいと考えている.
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は当初グロースキャビネットを購入する予定であったが,研究室内の他研究者が保有するグロースキャビネットのスペースに余裕が生じたために,至急に購入する必要性が薄れた.その結果,本機器の購入費用が次年度使用額として発生した. 本研究費において,現在研究員を一名雇用しているが,現在週一回の雇用であり,今後の研究の加速化のために,雇用日数を増やすことを考えている.次年度においては新たに交付される研究費と合わせて,この研究員雇用ならびに物品購入費としての使用を考えている.
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