栽培バラの四季咲き性は、単一の劣性遺伝子座に支配された遺伝形質である。栽培バラに四季咲き性をもたらした原因変異を特定した結果、KSNという花芽分化を抑制する遺伝子にレトロトランスポゾンが挿入したことが原因であることが分かっている。本年度はKSN遺伝子に連鎖しバラの自家不和合性を制御していると考えられるS遺伝子を特定したうえで、四季咲き性をもつ栽培バラでは、KSNへのボトルネック効果によってS遺伝子の多様性が低いとの仮説を検証をすることを目的に研究を進めた。 バラに近縁ですでにゲノム解読されたイチゴ、モモ、リンゴの自家不和合性遺伝子の情報をもとに、バラのゲノムから候補遺伝子の単離を行い、めしべ側の因子となるS-RNaseをコードする候補遺伝子を単離した。候補遺伝子をバラの連鎖地図上にマッピングしたところ、KSN遺伝子と同じ染色体上に座乗していることが示唆された。この候補遺伝子を起点に周辺のゲノム領域を15kbpにわたって解読した結果、おしべ側の因子となるF-boxタンパクをコードする遺伝子が複数連鎖していることも判明した。この領域を、バラの自家不和合性を制御するS遺伝子座の候補とし、現在、交配実験と遺伝子発現解析によって検証を進めると同時に、四季咲き性をもたらす原因となる「レトロトランスポゾンが挿入されたKSN」に連鎖したS遺伝子座の遺伝的多様性が低いかどうかを調べる実験を進めている。
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