研究課題
植物はウイルスの感染に対して、RNAサイレンシングならびに自然免疫応答という2つの防御メカニズムを備えている。本研究ではこれらを対象として、それぞれの防御応答機構を詳細に解析することにより、 これらの間に存在するクロストークを明らかにすることを目的とする。前年度にはウイルスに対する植物の自然免疫応答とRNAサイレンシングのクロストークの解析に最適なパソシステムを検討した。シロイヌナズナに感染する植物ウイルスを探索・比較し、ポテックスウイルス属のplantago asiatica mosaic virus(PlAMV)が最も効率よく全身感染することを明らかにした。一方、JAX1はポテックスウイルス属ウイルスの感染を強く抑制する抵抗性遺伝子であるが、JAX1による抵抗性は自然免疫応答の1種であると考えられる。そこで、今年度はこの系を用いて自然免疫応答の解析を行った。すなわちJAX1による抵抗性に関わるウイルス側因子を解析し、ウイルス複製酵素が関与することを明らかにした。一方、ポテックスウイルスのRSSであるTGBp1の機能解析を行った。強いRSS活性をもつPlAMVのTGBp1を解析に用いた。平成24年度に作出したTGBp1形質転換植物の表現型解析を行った結果、tasiRNA経路の変異体と同様の表現型を示した。また、TGBp1形質転換体から小分子RNA画分を抽出し、ディープシークエンスにより小分子RNAの蓄積量を解析したところ、tasiRNAの蓄積量が特異的に抑制されていたことから、TGBp1がtasiRNA合成に関与する経路を標的とする可能性が考えられた。
2: おおむね順調に進展している
自然免疫応答ならびにRNAサイレンシングについて解析し、自然免疫応答においてはJAX1抵抗性の機能解析において当初の計画以上の成果を得た。一方、RNAサイレンシングは予定通り研究が進んだ。以上より概ね研究計画は順調に進んでいると考えられる。
自然免疫応答の研究においてはJAX1抵抗性の機能解析において当初の計画以上の成果を得たため、さらに発展させ、JAX1の機能解析を重点的に進める。小分子RNAの解析は継続し、JAX1抵抗性誘導時の小分子RNAの解析を行う。一方、RNAサイレンシングサプレッサーの機能解析は継続的に行い、TGBp1の機能を明らかにする。
RNAサイレンシングサプレッサーの機能解析に関しては、平成26年度実施予定のTGBp1機能の全容解明まで平成25年度に行うことを想定していたが、宿主因子の解析は実施に至らなかったため、直接経費次年度使用分が発生した。今年度はTGBp1の機能解析を重点的に行う方針である。
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