研究課題
農業上重要形質である酸性土壌耐性は,多数の遺伝子に支配される典型的なポリジーン形質である.本研究では,ゲノムワイド関連解析(GWAS)により,酸性土壌耐性差の原因となっている遺伝子群の同定を試みた.酸性土壌ストレスの主要因であるアルミニウム(Al)とプロトンについて,シロイヌナズナ206系統の耐性を根長により評価し,約20万SNPを用いてGWASを行った.リッジ回帰分析により,約150 SNPにより両耐性形質の約70%が説明されることが示された.また,これらの酸性土壌耐性関連遺伝子座は,塩耐性や過酸化水素耐性に関するGWAS解析により同定された耐性関連遺伝子座とは異なっていた.プロトン耐性関連SNP近傍には,耐性に関連が示唆されている細胞壁安定関連遺伝子やpH恒常性維持に関わる分子シャペロン遺伝子などが検出された.一方,Al耐性では,Al耐性遺伝子リンゴ酸トランスポーターAtALMT1,耐性に関連が示唆されているテルペノイドやカロースの合成遺伝子が存在した.また,AtALMT1プロモーター上の関連SNPを耐性型にもつ系統群は,感受性型に比べて約2倍程度AtALMT1発現量が高く,シロイヌナズナAl耐性への寄与率は40%程度であった.プロモーター多型を組換えたシロイヌナズナを評価したところ,トランスポゾンの挿入が耐性の原因のひとつであることが明らかとなった.しかし,ある分集団内の耐性差はこの変異では説明できなかった.両耐性関連遺伝子の候補について,それぞれ100弱の遺伝子破壊株シロイヌナズナの耐性をスクリーニングしたところ,いくつかの遺伝子破壊株で感受性が確認された.以上のことから,シロイヌナズナのAl耐性差に関与する遺伝子群は,AtALMT1遺伝子の発現制御に関与するものが多いと考えられたが,その他の機構に多くの遺伝子群が関与していることが明らかとなった.また,ほとんど明らかにされていないプロトン耐性に関しても新規耐性遺伝子の関与が示唆された.
27年度が最終年度であるため、記入しない。
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Plant, Cell and Environment
巻: 39 ページ: 918-934
10.1111/pce.12691