研究課題/領域番号 |
24688011
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
岡田 正弘 中部大学, 応用生物学部, 講師 (40377792)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 翻訳後修飾 / イソプレニル化 / トリプトファン / 枯草菌 / クオラムセンシング |
研究概要 |
平成24年度に行った研究において、ComXフェロモンやその前駆体であるComXを指標にした相同性検索は困難であることが判明したため、平成25年度は、ComXのトリプトファンをイソプレニル化し、ComXフェロモンを生合成する修飾酵素であるComQを指標とした相同性検索によって、トリプトファンのイソプレニル化が普遍的に存在する機能発現に必須な翻訳後修飾であることを証明することにした。修飾酵素ComQは、テルペン類の生合成前駆体であるイソプレニル二リン酸の生合成酵素と相同性があるため、単にComQを指標に相同性検索を行っても、イソプレニル二リン酸生合成酵素であるかトリプトファンイソプレニル化酵素であるか区別がつかない。そこでComQが、ComXのトリプトファンを認識し、イソプレニル化するために必要なアミノ酸残基を決定した。具体的には、イソプレニル二リン酸生合成酵素において酵素活性に必須なSARMと呼ばれるモチーフに相当するComQのアミノ酸配列、およびその近傍のアミノ酸を変異させたComQ変異体をcomQ遺伝子を導入した大腸菌を用いてそれぞれ作成し、GPPまたはFPP存在下、別途、固相合成したComXペプチドとのin vitro酵素反応によってComQにおけるComX認識に必要なアミノ酸配列を解明した。その結果、トリプトファンイソプレニル化酵素とイソプレニル二リン酸生合成酵素の違いを生み出すアミノ酸残基を見いだすことが出来た。さらに、決定したアミノ酸残基をコードする遺伝子を有する生物種をゲノム配列のデータベースから検索し、候補を選別した。その内の一つについては、遺伝子クラスターを有するプラスミドを候補細菌のDNAを鋳型に作成し、大腸菌に導入して過剰発現させた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度に行った研究において、ComXフェロモンやその前駆体であるComXを指標にした相同性検索を行うことは困難であることが判明したが、平成25年度は、前駆体ComXのトリプトファンをイソプレニル化し、ComXフェロモンを生合成する修飾酵素であるComQを指標とした相同性検索を行うことによって、候補を選別することが研究実施計画であった。そこでまず、修飾酵素ComQにおけるComXのトリプトファンを認識し、イソプレニル化するために必要なアミノ酸残基の決定を行った。この結果によって、ComQを指標とした相同性検索を行うことすることができるようになり、決定したアミノ酸残基をコードする遺伝子を有する生物種をゲノム配列のデータベースから検索し、10種類程度の候補を選別することができた。さらに、その内の一つについては、実際に、遺伝子クラスターを有するプラスミドを候補細菌のDNAを鋳型に作成し、大腸菌に導入して過剰発現を行うことができた。これらの結果をベースに、平成26年度は、新たに2~3種類の候補細菌に対しても同様の研究を行う予定である。さらに、化学合成によって、得られた修飾ペプチドを合成すると共に、その化学構造を証明する予定である。なお、最終的にはトリプトファンのイソプレニル化が普遍的に存在する機能発現に必須な翻訳後修飾であることを証明することであり、平成27年度は、そのための研究を行う予定である。これらの計画は、当初の予定通りであるため、おおむね順調に推移していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度の研究により、決定したComQのコンセンサス配列をコードする遺伝子を有する生物種をゲノム配列のデータベースから検索し、いくつかの候補を選別できており、その内の一つについては、遺伝子クラスターを有するプラスミドを候補細菌のDNAを鋳型に作成し、大腸菌に導入して過剰発現を行うことができた。そこで、平成26年度は、他の候補細菌のDNAを鋳型に作成し、大腸菌に導入して過剰発現を行う。プロトタイプであるとの仮定から、comQ遺伝子がcomX遺伝子とクラスターを形成している細菌を優先して探索を行う。新たに2~3種類の候補細菌に対して、修飾ペプチドが常分泌型でない可能性や、分泌量が少ない可能性を考慮し、選別した遺伝子クラスターを有するプラスミドを候補細菌のDNAを鋳型に作成し、大腸菌に導入して過剰発現させる予定である。続いて、作成した大腸菌の培養液からイソプレニルトリプトファン含有ペプチドを検出する。なお、分解し易いイソプレニルトリプトファンの検出には、申請者らが構築したComXフェロモン検出法を参考にしたLC-MS/MS分析を行う。分析はイソプレノイドのフラグメントイオンに着目したMRM法を用いる。さらに、MS/MS分析を同時に行うことでアミノ酸配列を解析し、トリプトファンの分子量がイソプレニル基分増大していることを明らかにする。さらに、平成25年度に過剰発現を行った候補については、固相ペプチド合成法により、修飾ペプチドを化学合成し、両者を比較することで、その化学構造を証明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた主な理由としては、固相ペプチド合成法により、修飾ペプチドを化学合成し、両者を比較することで、その化学構造を証明するための、ペプチド合成試薬とその精製に用いるためのHPLC溶媒の購入額が少なかったためである。なお、申請者は既に修飾ペプチドの固相合成法は確立済みである。これらのペプチド合成試薬とHPLC溶媒については、研究の進展を考慮した場合に、平成26年度に購入し、使用する方が相応しいと判断した。また、プライマーや変異体作成用試薬の一部の購入に関しても、研究活動の効率的な活性化や、それに伴う研究費の効果的かつ効率的な使用のためには、平成26年度に購入し、使用する方が妥当であると判断したため、次年度使用額が生じた。 平成26年度は、今後の推進方策でも示したが、新たに2~3種類の候補細菌に対して、選別した遺伝子クラスターを有するプラスミドを候補細菌のDNAを鋳型に作成し、大腸菌に導入して過剰発現させるための、プライマーや変異体作成用試薬として用いる計画である。また、平成25年度に過剰発現を行った候補については、平成26年度に固相ペプチド合成法により、修飾ペプチドを化学合成し、両者を比較することで、その化学構造を証明する計画であり、そのために必要な、ペプチド合成試薬とその精製に用いるためのHPLC溶媒を購入する計画である。また、平成26年度において、それ以外の候補細菌由来の修飾ペプチドの過剰発現に成功した場合にも、ペプチド合成試薬とその精製に用いるためのHPLC溶媒が必要となるが、それぞれの研究の進展に合わせて、研究費を効果的かつ効率的に使用する計画である。
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