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2014 年度 実績報告書

熱帯林の断片化がフタバガキ科樹木の雑種化に与える影響の解明

研究課題

研究課題/領域番号 24688017
研究機関独立行政法人森林総合研究所

研究代表者

田中 憲蔵  独立行政法人森林総合研究所, 植物生態研究領域, 主任研究員 (30414486)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードフタバガキ科 / サラノキ / 雑種 / 熱帯林 / 断片化 / 保全
研究実績の概要

マレーシアやインドネシアなど東南アジアの熱帯雨林で優占するフタバガキ科サラノキ属(Shorea)からは、種間の雑種第一代(F1)が複数個体見つかっている。雑種とその両親種の稚樹段階における生態特性を明らかにするため、成長や枯死について3年間モニタリングした結果を取りまとめた。雑種と親種を合わせて設置した3つのプロットで合計約1000個体の稚樹が生育していた。各プロットで全稚樹に占める雑種の割合はばらつき、尾根に設置したプロットでは1%程度だったが、斜面や谷に設置したプロットではそれぞれ15%、30%と高かった。稚樹のサイズ分布は雑種、親種共にL字型分布を示した。3年間の稚樹の枯死率は、S. leprosulaが最も高く、次に雑種、S. curtisiiの順に低くなった。直径や樹高成長量は、S. leprosulaが高く、雑種とS. curtisiiはその半分程度の値だった。樹高/直径比は、S. leprosulaで高く、直径成長より樹高成長を優先させ光資源の獲得に投資することが分かった。対して、S. curtisiiは、この比が小さく、より直径成長に投資して比較的折れにくい幹を作ることが分かった。雑種の比は両者の中間型であった。地形と稚樹の分布にも違いが見られ、斜面上部にS. curtisiiが、下部にS. leprosulaが多く分布していた。雑種稚樹は、両親種との中間的な斜面中部に比較的多く出現した。以上の結果から、雑種稚樹は両親種との中間的な成長や枯死特性を示し、生育環境も中間的であると考えられた。これらの成果の一部は2014年6月に行われた日本熱帯生態学会で公表した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

調査地の一つであるブキティマ自然保護区がトレイル等の全面修復のため2014年9月から立ち入り規制がかかったが、研究継続のため入山が許可された。その他のトラブルは無く、当初の計画通りに進行している。

今後の研究の推進方策

これまで、6か所の森林で雑種化の程度を調査してきたが、今後はさらに断片化面積の異なる森林をあと4か所程度調査し、母樹の雑種化率と断面化の程度の関係を明らかにする。また、ブキティマ自然保護区に設置した稚樹モニタリングプロットのデータから枯死と成長について取り纏め論文にして公表する。

次年度使用額が生じた理由

H26年度に、現地調査をあと2回予定していたが、現地カウンターパートとの日程調整がつかず、H27年度に調査を繰り越したため。

次年度使用額の使用計画

H27年度にH26年度に予定していた現地調査を行い予算を使用する。

備考

2015年2月12日に森林総合研究所のプレスリリースとして本研究課題の成果の一部を「熱帯雨林の葉の光合成能力は樹木の高さで決まる ―世界で初めて統一的に解明―」というタイトルで公表した。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2015 2014 その他

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 謝辞記載あり 1件) 学会発表 (2件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Height-related changes in leaf photosynthetic traits in diverse Bornean tropical rain forest trees.2015

    • 著者名/発表者名
      Kenzo, T., Inoue, Y., Yoshimura, M., Yamashita, M., Tanaka-Oda, A., Ichie, T.
    • 雑誌名

      Oecologia

      巻: 177 ページ: 191-202

    • DOI

      10.1007/s00442-014-3126-0

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Aboveground and belowground biomass in logged-over tropical rain forests under different soil conditions in Borneo2015

    • 著者名/発表者名
      Kenzo, T., Furutani, R., Hattori, D., Tanaka, S., Sakurai, K., Ninomiya, I., Kendawang, J.J.
    • 雑誌名

      Journal of Forest Research

      巻: 20 ページ: 197-205

    • DOI

      10.1007/s10310-014-0465-y

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Leaf water use in heterobaric and homobaric leafed canopy tree species in a Malaysian tropical rain forest.2015

    • 著者名/発表者名
      Inoue, Y., Kenzo, T., Tanaka-Oda, A., Yoneyama, A., Ichie, T.
    • 雑誌名

      Photosynthetica

      巻: 53 ページ: 177-186

    • DOI

      10.1007/s11099-015-0105-6

    • 査読あり
  • [学会発表] シンガポールの断片化林におけるサラノキ属雑種稚樹の成長と枯死2014

    • 著者名/発表者名
      田中憲蔵、米田令仁、上谷浩一、名波哲、Shawn Lum、則近由貴、市栄智明
    • 学会等名
      第24回日本熱帯生態学会年次大会
    • 発表場所
      宇都宮大学
    • 年月日
      2014-06-14 – 2014-06-15
  • [学会発表] 東南アジア熱帯雨林における巨大高木リュウノウジュとホソバリュウノウジュの雑種形成2014

    • 著者名/発表者名
      濱田稔史、 名波哲、 山倉拓夫、 伊東明、 上谷浩一、 市栄智明、 田中憲蔵、 Lucy Chong
    • 学会等名
      第24回日本熱帯生態学会年次大会
    • 発表場所
      宇都宮大学
    • 年月日
      2014-06-14 – 2014-06-15
  • [備考] 熱帯雨林の葉の光合成能力は樹木の高さで決まる ―世界で初めて統一的に解明―

    • URL

      http://www.ffpri.affrc.go.jp/press/2015/20150212/index.html

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公開日: 2016-06-01  

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