平成28年度は板目面における割れの発生に関する更なる知見を得るため、共焦点レーザー顕微鏡でコナラ辺材の表面を観察するとともに、抵抗率計を使用して表面の電気抵抗を定時的に測定することで乾燥に伴う表面の水分変化を計測した。温度約50℃、相対湿度5%以下の条件で乾燥した結果、乾燥開始直後は約1.0E5 Ω/□だった表面抵抗率が急激に上昇したが乾燥時間が120分を過ぎた頃に1.0E11Ω/□となった後、緩やかに上昇し、乾燥が終了した2880分後には表面抵抗率は1.0E14Ω/□となった。一方、共焦点レーザー顕微鏡で試料表面の板目面を観察した結果、乾燥開始300分後までほとんど変化が無かったが、その後徐々に収縮し始め、乾燥が終了した2280分後まで直線的に収縮し、その収縮量は4%となったが、観察視野ではマイクロクラックの発生は観察出来ず、肉眼でも割れは確認できなかった。 次に、木口面のマイクロクラックがマクロクラックへ至るメカニズムを解明するため、心材と辺材の両部位を含む従来よりも寸法の大きなスギのサンプルを使用して乾燥過程における木材組織の形態変化を共焦点レーザー顕微鏡およびデジタルマイクロスコープで経時観察した。その結果、乾燥開始直後に心材部の晩材の放射組織でマイクロクラックが発生し、その後、順に樹皮側の成長輪界の晩材へと発生が移行した。その後、マイクロクラックの発生は移行材へと移り、心材の発生から大幅に遅れて辺材部でもマイクロクラックが発生した。辺材にマイクロクラックが発生した時には、心材で発生したマイクロクラックは既に最大の形状を終えて、収縮し始めていた。また、マイクロクラックは隣接した成長輪界の同一の放射組織で発生するものもあり、その際はマイクロクラック同士が繋がって大きな割れへと進展するものが観察された。
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