研究課題/領域番号 |
24688022
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
有路 昌彦 近畿大学, 農学部, 准教授 (40512265)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 自主規制の効果 / 魚ばなれ / 需要体系分析 / 水産物輸出 / EUHACCP / 知的財産権管理 / IQ / TAC配分 |
研究概要 |
我が国の水産業のあり方を検討するために、まず我が国の資源管理について京都府機船底挽網漁業連合会の調査を行い、研究機関によって算出されたABCと、研究成果に基づく目合い規制(自主規制)による混獲防止などが、効果的にズワイガニ資源の回復に寄与したことが明らかになっており、県別のTAC配分が実質上IQ(京底連は一法人)になっていること、自主規制が科学性に基づくこと、研究者と科学者の関係性が良好なことが成功の要因になっていると分析された。つまりIQやITQでなくとも、より効果的な資源管理の方法が国内に存在する事実が明らかになった。(供給側の分析) 次に販売主対象になる国内需要の分析を、需要体系分析を用いて行った。その結果、水産物需要は「魚ばなれ」という現象で縮小していっていると指摘されているものが、実際は「所得の減少による豚肉と鳥肉への代替の結果」であるということが明らかになった。需要の減少が単なる嗜好の変化によるものではないため、単純な魚食の普及PR活動よりも、他の動物性タンパク質源に対して相対的に高い価値を消費者が感じられるようにする部分に、PRの重きを置く必要があることも意味している。加えて、今後人口が減少し一人当たり所得の大幅上昇は見込めない状況では、海外に新規需要を求める必要があることも示唆している。(需要側の分析) そして実際に輸出を行っている企業へのヒアリングと市場分析の結果、価格的には輸出が可能な水準であるが、実際にはHACCP(特にEUHACCP)の取得が不可欠であり、取得がよりスムーズになるような行政対応が必要であること、海外マーケットを得るために食材だけでなく仕組み(例1回転寿司の提供方法など)を輸出する必要があることも明らかになった。これらは知的財産権も強く絡むことから、知的財産権の管理強化と市場での識別可能性(海外の消費者が日本産であると認知できるようにする)が不可欠であることが明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
資源管理に関しては京都府農林水産研究センター海洋センターの協力のもと、具体的なフィールドの京底連を対象にITQでなくても効果的に資源を回復させた例とそのメカニズムを明らかにすることができ、水産物市場の分析では「魚ばなれ」の理由を定量的に明らかにすることができた。これまでにない研究成果であり、今後の我が国水産業の戦略を決める上で重要な貢献になった。これらは当初の想定を大幅に上回って得られた成果である。
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今後の研究の推進方策 |
現時点で研究は順調に進んでいるが、エコラベルの分析より先んじて我が国市場の変化の予測を行った。これはあり方の検討上より優先される課題であったためであるが、25年度はエコラベルの効果に関する分析を行う。
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