我が国の資源管理の方法に関して13の事例を分析した結果、IQに類するものは過去から存在していることが明らかになった。また資源管理の9の成功例を分析した結果、いずれも科学的な分析に基づく管理体制が十分に構築されていることが確認された。以上のことからわが国の資源管理方法は機能的に働いているものも多く存在しているといえる。また不均衡余剰生産量モデルによる分析結果から、資源管理システムの存在そのものが過剰漁獲の防止に強く寄与していることが示された。また養殖に関しては、ノルウェーは区画漁業権に相当するライセンスを譲渡可能にしているため、我が国で発生するような利用と権利の保有のミスマッチは解消され、それが大規模経営を可能にした要因であり、極めて参考になる。 輸出を可能とする高度水産加工施設の経営分析で、工場の投資に約13億円(運転資金を除外)が必要であり、小規模生産では対応しにくいことが明らかになった。 ブリを対象にしたコンジョイント分析では、刺身1パック(約100g)でMWTPがHACCP対応161円、SQFなどの品質認証229円、ASCのような環境認証59円という結果になり、衛生管理と品質管理に対するニーズが高いことが明らかになった。 以上から我が国の水産業全体を見ると、すでに漁業は資源管理制度はあらゆる手段がとられており(まき網漁業を除いて)管理方法改善による大幅な生産性の向上の余地がそれほど期待できるわけではないこと、養殖業は区画漁業権の譲渡可能性で大幅に大規模化が可能であると同時にそれ以外にももともと国際優位性を十分持つことから、養殖業を中心とした産業構成に将来性があるといえる。同時に国際競争に勝つためにはHACCP手法と品質認証を取り入れた高度加工施設を用いた輸出型の垂直養殖統合体が必要であると結論できる。
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