研究課題/領域番号 |
24688027
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
友永 省三 京都大学, (連合)農学研究科(研究院), 助教 (00552324)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ニワトリ / ラット / ストレス / 成長 / 脳 / 血漿 / メタボローム / 有機酸 |
研究概要 |
ストレスに対する過剰な生理反応を緩和できれば、各種疾患の予防に貢献できる可能性がある。本研究では、成体期の過剰なストレス反応の軽減を目的とした生後脳機能発達期における栄養学の確立を目指している。本年度は、そのために以下の研究を行った。 生後発達期の脳内で重要な働きを有する興奮性神経伝達を制御しうるアミノ酸代謝産物群のうち、トリプトファン代謝産物のキノリン酸と、D-セリンの高精度分析系を検討した。両分析系にはガスクロマトグラフ質量分析計を用いた。キノリン酸の分析系は、げっ歯類の血漿分析に適用可能であったが、脳組織においては、夾雑物が多く微量であったことから、前処理の改善などが必要であることを確認した。D-セリンは、標準物質による誘導体化の検討を行った。これら分析系を、生後の脳機能発達に伴う脳内含量および血中濃度の確認に用いるためには更なる検討が必要であることが示唆された。 ニワトリならびにラットにおける血漿メタボローム解析系の確立を試みた。最新ライブラリーの導入により、旧バージョンに比して同定成分数の増加につながった。ラットならびにニワトリにおいて、アミノ酸や有機酸など少なくとも数十成分が同定可能であることを確認した。 ラットの各成長段階における血漿および各組織の遊離アミノ酸濃度をガスクロマトグラフ質量分析計によるアミノ酸分析キットを用いて網羅的に調べ、幾つかのアミノ酸代謝における成長に伴う変動を確認した。血漿メタボローム解析も行うことで、より正確な代謝の解釈につながった。以上から、特定のアミノ酸代謝に注目する手掛かりを得ることができた。 ニワトリヒナでは、成長およびストレス感受性が異なる二系統における血漿メタボローム解析を行い、系統間の生理機能の差異を考察する上で有用な手掛かりをえることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本課題研究において多用するガスクロマトグラフ質量分析計によるメタボローム解析のライブラリーがバージョンアップされたことにより、当初の予定よりも多くの成分を同定することが可能になった。したがって、より多くの結果を得ることができたことから、詳細な解析に有用であった。ラットの成長に伴うアミノ酸代謝を調べると、予想していなかったアミノ酸代謝に強い影響が認められた。しかしながら、本代謝経路は、これまで詳細に調べられていないことから、本経路と発達期における生理機能の関連解明の意義を追求する意義を見出すことが出来た。
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今後の研究の推進方策 |
キノリン酸とD-セリンの分析系確立に引き続き取り組み、成長が脳内含量や血漿中濃度におよぼす影響を把握する。 同時に、血漿や各組織におけるメタボローム解析も行うことで、生体の代謝の包括的理解を試みる。更には、キノリン酸やD-セリンと関連がある代謝を探索し、その制御が成長やストレス感受性に影響を及ぼすのか明らかにする。 ニワトリにおいては、ストレス感受性や成長が異なる系統間の代謝の差異を更に詳細に解析し、その中で見出した代謝を制御する栄養素の機能解明を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
25年度に本課題研究を遂行していく中で、当初の実験計画よりも、ラットの生後発達期におけるアミノ酸代謝を詳細に解析する意義を見出した。その中でも特定の代謝産物分析において、内部標準物質として安定同位体試薬を購入する必要を認めた。しかしながら、これは非常に高価であることから、前倒しが必要であると判断し、基金の前倒し請求を行った。しかしながら、研究を行ううちに、予定よりも消耗品の節約につながったため、若干の次年度使用額が生じることになった。 若干の次年度使用額が生じたが、これも次年度の研究費として効果的に組み込む。そのことにより、今年度の研究を効果的かつ適正に行うことが出来る。
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