動物において、過度なストレスへの対策は重要である。ストレス源の根絶だけでなく、ストレスに対する過剰な生理反応を緩和できれば、各種疾患の予防に貢献できる可能性がある。本研究では、成体期の過剰なストレス反応の軽減を目的とした生後脳機能発達期における栄養学の確立を目指している。そのためには、まず各発達・成長段階における中枢および抹消組織の代謝を網羅的に把握することが必要であると考えた。したがって、本年度は前年度に引き続き、ラットならびにニワトリにおいて、各発達・成長段階における血漿ならびに各組織中の低分子代謝産物含量を、ガスクロマトグラフ質量分析計によるアミノ酸の定量分析と低分子代謝物質の網羅的半定量分析(メタボローム解析)を用いて調べた。メタボローム解析では、前年度に用いたデータベースソフトを更新することで、より多くの低分子代謝物質を同定できた。両動物種において、生後の発達に伴い顕著な減少を示す低分子代謝物質を幾つか見出した。その中には、両動物種で共通の低分子代謝物質も認められた。更に、複数の動物種において、ストレス負荷時における血漿中低分子代謝物質濃度が興味深い変動を示すことも確認した。以上より、成体期のストレス反応の軽減を目指す栄養学の確立に向けた基盤情報を取得することができた。今後は、本研究によって得られた情報を参考にして、着目した低分子代謝を改変するような栄養素の生後脳機能発達期における投与が成体期のストレス反応に及ぼす影響を調べる予定である。
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