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2014 年度 実績報告書

早期生殖能力減退マウスの分子内分泌学的解析と家畜育種マーカーへの応用

研究課題

研究課題/領域番号 24688028
研究機関広島大学

研究代表者

島田 昌之  広島大学, 生物圏科学研究科, 准教授 (20314742)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワード卵巣 / 精巣 / 局所性成長因子
研究実績の概要

昨年度,排卵刺激であるLHにより顆粒層細胞で発現するNRG1が,顆粒層細胞自身と卵丘細胞に作用しCa2+上昇を抑制することを明らかとした.本年度は,そのCa2+上昇抑制がCalapin2活性を生理的範囲で維持させることで,卵丘細胞間のギャップジャンクション閉鎖時期を調整することを見いだした.さらに,Calpain2をコードするCapn2flox/floxマウスとCyp19a1Creマウスを交配させ,顆粒層細胞特異的Calpain2欠損マウスを作出し,その妊孕性を交配試験により解析した.その結果,6ヶ月間の交配試験で1度の出産のみが確認されただけの極めて低い妊孕性であり,その原因が発情期の延長であることを見いだした.したがって,NRG1により制御されるCalapin2活性が,排卵に重要な役割を果たすことが初めて明らかとなった.
NRG1は,雄においては精巣のライディッヒ細胞でLH刺激により上昇するが,このライディッヒ細胞で特異的にNRG1を欠損させたマウスが,精子の尾部伸長異常を生じることを見いだした.これは,2週齢以降で活発化するライディッヒ細胞の増殖にNRG1が必須であること,成獣精巣ではNRG1がライディッヒ細胞の生存因子であることに起因しており,欠損マウスでは加齢と共にライディッヒ細胞数が減少する結果,精子形成異常を引き起こし,12ヶ月齢以上ではほぼ完全に妊孕性を消失することが明らかとなった.
以上のように,本年度は雌ではNRG1下流にCalapin2があり,その制御の排卵への重要性を明らかとする出発点となる知見を得ることができた.雄では,ライディッヒ細胞の正常性による造精機構の担保という新しい概念を提唱するに至った.

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

雌においてNRG1下流にあることを見いだしたCallapin2について,その顆粒層細胞特異的欠損マウスの作出を行ったが,顆粒層細胞には同じ基質を持つCalapin1も発現することから,両者の欠損マウスを作出する必要性が生じた.そこで,Capn1-/-;Capn2flox;flox/Cyp19a1Creを作出し,解析することとしたが,必要数の雌マウスを得るのに時間を要し,本年度中には交配試験の結果を得るにとどまり,詳細な解析を実施できていない.
したがって,1年間の研究期間の延長を行い,平成27年度に詳細な解析を実施する計画である.

今後の研究の推進方策

雄においては,遺伝子欠損マウスによるNRG1の機能解析を終え,NRG1が雄の妊孕性を長期間維持するキーファクターであることを明らかとすることができた.今後は,このマウスにおける知見をブタやウシに応用することを目指し,畜産分野に貢献する研究を展開する予定である.
雌においては,排卵,卵成熟に果たすNRG1の重要性は示すことができたが,そのメカニズム解明の途上にある.現在解析を行っているCalapin2は,これまで遺伝子欠損マウスの妊孕性に関する報告がないことから,学術的に意義深い研究成果が得られると期待できる.さらに,本成果を畜産分野に波及していくために,繁殖成績の高い品種,系統と低いそれらについて,NRG1を中心に比較解析することで新たな分子育種マーカーを得る研究を展開する構想である.

次年度使用額が生じた理由

2013年度にNeuregulin1欠損マウスにおいて活性値が異常を示す因子としてCalpain familyを同定し,2014年度にその遺伝子欠損マウスの作製を行ってきた.卵巣では,Calpain 2が主であるが,Calpain1もユビキタスに発現することから.両タンパク質をコードするCapn2とCapn1遺伝子を欠失させる必要が生じた.しかし,これらのwhole body遺伝子欠損マウスは胎生致死であるため,顆粒膜細胞特異的に遺伝子を欠損させるべく,Capn1-/-;Capn2flox/flox;Cyp19a1Creマウスを作出している.このら卵巣特異的でかつダブルノックアウト,それも雌が得られる確率は,非常に低い(1/64)ため解析に必要な充分な個体数を2014年度内に得ることができなかったため,次年度使用額が生じた.

次年度使用額の使用計画

2015年度においては,効率的にダブルノックアウトを得るために交配パターンを工夫し,ほぼ産子が得られない表現系を示すことを明らかとしつつある.さらに,組織学的,分子生物学的解析を進めることで,Neuregulin1-Calapin familyによる卵巣機能制御を以下のように解明する.
1.遺伝子改変マウスの飼育数を増加させ,解析に必要なマウス数を準備する.このために,餌の購入費に使用する.2.産子数の低下要因を解明するため,血中ホルモン濃度測定にもちいるEIAキットを購入する.3.分子生物学的解析に必須な酵素と消耗品を購入する.

  • 研究成果

    (7件)

すべて 2014

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 2件、 謝辞記載あり 3件) 学会発表 (2件) (うち招待講演 2件) 図書 (1件)

  • [雑誌論文] The lncRNA Neat1 is required for corpus luteum formation and the establishment of pregnancy in a subpopulation of mice.2014

    • 著者名/発表者名
      Nakagawa S, Shimada M, Yanaka K, Mito M, Arai T, Takahashi E, Fujita Y, Fujimori T, Standaert L, Marine JC, Hirose T
    • 雑誌名

      Development

      巻: 141 ページ: 4618-4627

    • DOI

      doi: 10.1242/dev.110544

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Targeted disruption of Nrg1 in granulosa cells alters the temporal progression of oocyte maturation.2014

    • 著者名/発表者名
      Kawashima I, Umehara T, Noma N, Kawai T, Shitanaka M, Richards JS, Shimada M.
    • 雑誌名

      Molecular Endocrinology

      巻: 28 ページ: 706-721

    • DOI

      doi:10.1210/me.2013-1316.

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] Protein kinase C (PKC) increases TACE/ADAM17 enzyme activity in porcine ovarian somatic cells, which is essential for granulosa cell luteinization and oocyte maturation.2014

    • 著者名/発表者名
      Yamashita Y, Okamoto M, Ikeda M, Okamoto A, Sakai M, Gunji Y, Nishimura R, Hishinuma M, Shimada M.
    • 雑誌名

      Endocrinology

      巻: 155 ページ: 1080-1090

    • DOI

      doi:10.1210/en.2013-1655.

    • 査読あり / オープンアクセス / 謝辞記載あり
  • [雑誌論文] The expression and roles of semaphorin type 3C in granulosa cells during the luteinization process.2014

    • 著者名/発表者名
      Okabe A, Hiramatsu R, Umehara T, Fujita Y, Shimada M
    • 雑誌名

      Journal of Mammalian Ova Research

      巻: 31 ページ: 31-39

    • DOI

      doi: http://dx.doi.org/10.1274/jmor.31.31

    • 査読あり / 謝辞記載あり
  • [学会発表] Cumulus cells are essential mediators of LH induced ovulation stimuli from granulosa cells to the oocyte.2014

    • 著者名/発表者名
      Shimada M.
    • 学会等名
      3ed World Congress of Reproductive Biology,
    • 招待講演
  • [学会発表] 1.遺伝子改変(欠損)マウスの解析から体外成熟培養,体外受精系を考える2014

    • 著者名/発表者名
      島田昌之
    • 学会等名
      日本卵子学会学術講演会
    • 招待講演
  • [図書] Knobil and Neill’s Physiology of Reproduction 4th Edition2014

    • 著者名/発表者名
      Richards JS, Liu Z, Shimada M
    • 総ページ数
      2503
    • 出版者
      Academic Press

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公開日: 2016-06-01   更新日: 2019-12-27  

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