アレルギーの発症および病態形成のメカニズムの理解と薬効評価に、アレルギー疾患を自然発症するマウスの利用の有用性は広く認知されている。アトピー様皮膚炎を自然発症するNC/Ngaマウスを用いた研究は、当該疾患の病態の解明に大きな貢献をなしているが、当マウスでの皮膚炎はSPF環境下では発症しないなどの制限がある。本研究では、NC/Ngaマウスでの解析で課せられる制限のない、また、簡便で再現性の高いマウスの皮膚炎モデルを確立し、また、その皮膚炎の発症及び病態形成の分子機構の解明を行うことを目的とした。プロテアーゼ抗原をマウスの耳介表面に隔日5回塗布することにより、アトピー性皮膚炎に良く似た皮膚炎を誘導できることが明らかになった(以下、プロテアーゼ誘導性皮膚炎)。BALB/cマウスおよびC57BL/6マウスの両方の系統においてもプロテアーゼ誘導性皮膚炎の発症が観察されたが、BALB/cマウスの方がC57BL/6マウスよりも症状が重篤化し、このプロテアーゼ誘導性皮膚炎の感受性は遺伝的背景に影響されることが明らかになった。また、プロテアーゼ誘導性皮膚炎はオスよりもメスの方が症状が重いことが明らかになり、性別も発症に影響を与えることが明らかになった。このプロテアーゼによる皮膚炎は、アレルギー応答を誘導する中心的な免疫細胞であるマスト細胞が存在しないマウスでも誘導することができ、既知のアレルギー誘導機構とは異なる機序で、皮膚炎が誘導されていることが示唆された。
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