研究課題/領域番号 |
24688033
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
市居 修 北海道大学, (連合)獣医学研究科, 助教 (60547769)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 慢性腎臓病 / 伴侶動物 / バイオマーカー / microRNA・miRNA / イヌ・ネコ / 糸球体 / 尿細管間質 / 次世代シークエンス |
研究概要 |
本研究では、短鎖のRNA(microRNA;miRNA)をバイオマーカーとして獣医学に応用することを目的としている。対象疾患としては、伴侶動物で急増する慢性腎臓病に着目した。前年度はバイオマーカーmiRNA候補選抜のため、慢性糸球体腎炎(GN)モデルマウス(B6.MRLc1)を主に解析し、バイオマーカー候補miRNAを同定した。一方、伴侶動物におけるこれらの発現は不明である。特に、ネコmiRNAのデーターベース(配列、発現動態)は無い。本年度では、miRNA評価の伴侶動物医療への応用の第一段階として、イヌとネコの腎臓内miRNA発現と配列データをリスト化した。 腎機能数値が正常なイヌとネコより腎皮質と髄質を採取し、各組織よりtotal RNAを抽出し、ライブラリーを作製後、Small RNAシークエンスを行った。アライメントでmiRNAデータを抽出した。ネコのmiRNA配列情報は無く、マウスのデータベースを用いて新規に分類、同定した。 イヌの腎皮質と髄質で各々241種と225種のmiRNAが検出された。一方、ネコの腎皮質と髄質で各々220種と226種のmiRNAが検出された。イヌとネコに共通し、腎皮質で髄質よりも2倍以上強く発現するmiRNAは31種であり、この中でマウス糸球体でも強発現するmiRNA種は3種だった。一方、イヌとネコに共通し、腎髄質で皮質よりも2倍以上強く発現するmiRNAは14種であり、この中でマウス尿細管間質でも強く発現するmiRNA種は3種だった。以上、伴侶動物の腎皮質と髄質で発現するmiRNA種とその配列を明らかにした。 本年度の研究によって、伴侶動物の腎臓に発現するmiRNAデータベースの基礎がつくられた。各miRNAは、糸球体や尿細管間質で機能制御を担うと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度の計画は、イヌおよびネコの腎臓で発現するmiRNAの配列および種類をRNA-seqによって明らかにすることにあった。申請者は収集した臨床検体を用いてRNA-seqを行いmiRNAの発現パターンおよび配列を解明した。本結果を第156回日本獣医学会学術集会で発表し、Res Vet Sci誌に学術論文として公表した。 当初の目的は達成され、かつ成果を公表するに至ったので、上記評価とした。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの結果より、 1.慢性腎臓病モデルマウスの解析によってバイオマーカー候補miRNAを選した。 2.イヌ・ネコの腎臓におけるmiRNAの配列と発現パターンを明らかにした。 本研究の最終目標は「バイオマーカーmiRNAの尿中検出を伴侶動物の慢性腎臓病診断に応用する」ことであるため、以下の2つを到達目標として研究を進める。 1.慢性腎臓病罹患イヌ・ネコの腎臓・尿におけるバイオマーカー候補miRNAの発現動態を明かにし、診断ツールとしての有用性を検証する。 2.バイオマーカー候補miRNAの機能と病理学的意義をin vitroおよびin vivoで明らかにし、臨床家に診断ツールとしての基礎生物学的エビデンスを提供する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究の進捗状況により、平成25年度に予定していた「慢性腎臓病に罹患した伴侶動物の尿中・腎臓内miRNAの発現解析」を最終年度に行う計画変更をした。 miRNA発現解析に必須となる物品費を最終年度に確保するために当該次年度使用額を計上した。 「慢性腎臓病に罹患した伴侶動物の尿中・腎臓内miRNAの発現解析」における物品費の購入にあてる。具体的にはmiRNA抽出キット(尿、腎臓、パラフィン組織)、miRNA逆転写キット、定量的miRNA-TaqmanPCRキットの購入を計画している。
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