研究課題/領域番号 |
24689003
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
花岡 健二郎 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 准教授 (70451854)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 分析科学 / 有機化学 / 薬学 / イメージング / ランタノイド |
研究概要 |
本研究では、ランタノイド金属イオン錯体の持つ通常の有機小分子にはない優れた化学的特性を基礎生命科学研究に応用することを目的に、「低酸素環境」の可視化を目指した(1)MRIプローブおよび(2)長寿命蛍光プローブの2つのモダリティーに対応した可視化プローブの開発を論理的分子設計によって行う。平成24年度は特に、MRI(magnetic resonance imaging)に着目して、低酸素環境を検出するMRIプローブの開発を重点的に行った。MRIは、生体の深部に渡る断層画像を非侵襲的に、かつ高分解能で撮影できるため、臨床医療において様々な診断に汎用されている。MRI画像をより鮮明にするMRI造影剤として、主にGd^<3+>錯体が用いられており、さらに近年ではこのGd^<3+>錯体に機能を付加し、特定の病態や生体分子を可視化する試みが盛んに行われている。 具体的には、配位子に組み込まれたフェニルスルホンアミド基の水素原子のpK_aの変化によりランタノイド金属イオンへの水分子の配位数を変化させることを試みた。具体的には、まず、このフェニル基上にニトロ基を含むランタノイド金属イオン錯体を生体内還元酵素を豊富に含むラット肝ミクロソームを用いて低酸素環境下で還元し、アミノ基へと還元されることを確認した。同時に、フェニル基上の置換基を最適化することで、ニトロ体およびアミノ体のフェニルスルホンアミド基のpK_aを調整し、低酸素環境下で各種還元酵素によってニトロ基がアミノ基へと還元されることによって、ガドリニウムイオン(Gd^<3+>)への水分子の配位数を大きく変化させ、それによって、MRIシグナルの大きな変化を起こすことに成功した。また研究の遂行にあたり、化学・薬学・医学系の関連学会に参加し、分子設計と有機合成法、生物応用に関する資料収集も行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度には「低酸素環境」を検出するMRIプローブのプロトタイプの開発に成功しており、その成果の一部は、Bioorg. Med. Chem. 22(2012)2798-2802に発表している。当初計画の分子デザインのコンセプトは、予想以上にうまく進展したため、「当初の計画以上に進展している」とさせて頂いた。
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今後の研究の推進方策 |
本年度、研究計画は順調に進展しているため、今後の推進方策としては、当初の計画通り変更なく推進していく。 また、現在のところ、研究を遂行する上での問題点等はない。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は、当初計画の分子設計によって順調に、プロトタイプのMRIプローブの開発に成功したため、当初予想していた数ほどは化合物を合成する必要がなかったため、「次年度使用額」が生じた。本「次年度使用額」は、次年度は当初計画と比較して実験動物や生化学試薬などが多く必要とされることが予想されるため、これらに使用していく予定である。
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