研究課題/領域番号 |
24689008
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
浜本 洋 東京大学, 大学院・薬学系研究科, 助教 (90361609)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 感染症 / 微生物 / 抗生物質 / カイコ |
研究概要 |
カイコ黄色ブドウ球菌感染モデルにおける治療効果を指標とした探索により同定された新規抗生物質カイコシンは、通常の培地下に比べ、血清存在下での抗菌活性が高く、マウスでの治療活性が高いというユニークな特長を有する。本研究では、その血清存在下で活性が上昇するメカニズムを明らかにするとともに、病原性細菌の宿主内での増殖に必要な因子を明らかにし、新たな感染症治療薬の標的を同定することを目的とする。本年度において、我々はカイコシンの標的を同定できた。また、本標的がカイコシンの膜破壊活性において決定的な要因であることを、人工リボソームを用いて明らかにした。さらに、血清中のカイコシンの抗菌活性を促進する因子の精製を実施し、低分子量のタンパク質が、カイコシンの活性促進活性と同じ挙動でカラムから溶出されることが分かった。現在、本タンパク質についてアミノ酸分析による同定を行っており、その活性化メカニズムについて解析を行う予定としている。また、新学術領域研究ゲノム支援のご支援を受け、病原性因子の宿主増殖に必要な因子の探索・同定を目的とした、宿主因子存在下での試験管内で培養した黄色ブドウ球菌、及び、マウスに感染させた黄色ブドウ球菌の網羅的な遺伝子発現解析を実施した。その結果、黄色ブドウ球菌の遺伝子発現は、培地条件と比較し、宿主因子存在下、及び宿主内ではエネルギー生産経路や毒素生産、鉄取り込み経路を中心に大きく変動していた。また、試験管内での黄色ブドウ球菌の培養において宿主因子の添加により、発現上昇する遺伝子の中から、マウスに対する病原性に必要な因子の同定に成功した。さらに、黄色ブドウ球菌以外の病原性細菌の病原性因子、及び宿主側の免疫応答についても解析を実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
カイコシンの標的同定、及び作用機序解析については、ほぼ当初計画通りに遂行できた。また、メナキノンの病原性における役割についても解析が進んできている。さらに、本研究が新学術領域研究ゲノム支援に採択されたことにより、来年度に予定していた宿主因子存在下で培養した黄色ブドウ球菌、及び宿主内における黄色ブドウ球菌の網羅的な遺伝子発現解析が前倒しで実施できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画を前倒し、宿主環境下で高発現している遺伝子の、病原性及び宿主での増殖における役割について解析をさらに進める。また、カイコシンの血清中の活性化因子については、タンパク性であることが推定されたことから、そのノックアウトマウスを利用した解析についても視野に入れ、さらなるメカニズム解析を実施する。
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次年度の研究費の使用計画 |
ゲノム支援に採択されたことにより、次世代シークエンサーによる網羅的遺伝子発現解析に要する費用が不要となったため、直接経費次年度使用額が発生した。当該助成金については、今後の推進方策で述べたノックアウトマウスの解析に必要な費用、及び、宿主内増殖に必要な因子に対する化合物のスクリーニングのサイズ拡大に必要な費用を賄うこととする。
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