研究課題
前年度までに、マウスに感染させた黄色ブドウ球菌の臓器における遺伝子発現解析法を確立し、肝臓及び腎臓における遺伝子発現変動を解析した。本年度においては、感染1日目のマウスの黄色ブドウ球菌感染モデルから摘出した、心臓における黄色ブドウ球菌の網羅的遺伝子発現に成功した。そして、これらの臓器間で共通して有意に発現上昇する215遺伝子を同定した。それらの中には、これまで試験管内での血清添加条件での解析では見いだすことができなかった、発現上昇する遺伝子が認められた。また、感染宿主における黄色ブドウ球菌は、試験管内での解析とは異なる病原性遺伝子群の発現パターンを示しており、未知の制御機構の存在が示唆される。さらに複数の共通した機能未知遺伝子が有意に発現上昇していた。それらの発現上昇した遺伝子について、機能未知遺伝子を含む発現変動量が高い順から、既知の病原性遺伝子を除いて、複数の遺伝子破壊株を樹立しマウスにおける病原性を検討した。その結果、黄色ブドウ球菌の病原性に必要な複数の遺伝子を見いだすことに成功した。これらの遺伝子産物が抗菌薬の標的として有用である可能性が考えられる。さらに、抗菌活性を示さない低濃度のライソシンEで処理した黄色ブドウ球菌についても網羅的な発現変動解析を行い、感染した臓器中では発現上昇する遺伝子群が、逆にライソシンE処理により発現減少する傾向が認められた。従って、ライソシンEは直接菌を殺菌する作用だけでなく、低濃度でも細菌の活動を抑えている可能性が考えられる。これらについても今後さらに検討する必要がある。
26年度が最終年度であるため、記入しない。
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