研究概要 |
本研究では、ヒトにおける医薬品のバイオアベイラビリティの定量的な予測につなげるための実験系の確立ならびに数理モデルの構築、それらを用いたin silicoシミュレーションによる薬物動態関連分子の機能変動時の体内動態の変化を予測することを目的とした研究を進めている。 本年度は、まず、ヒト小腸に発現し、医薬品の吸収を抑制するCYP3A4, P-glycoprotein(P-gp)の定量的な役割を示すことを目的として、消化管吸収予測モデル(ACAT model)を構築し、in vitro実験において、Caco-2細胞での化合物の膜透過性、リコンビナントCYP3A4酵素における代謝の速度論的パラメータを算出した。これらのパラメータをモデルに反映させる際に、in vitroデータとin vivoでの発現量を結びつけるscaling factorを、複数のCYP3A4,P-gpならびにその両方の基質薬物の吸収率を最もよく説明できるように最適化を行うことに成功した。また、このscalingfactorを用いて、医薬品の投与量依存的な消化管吸収の非線形性について検討したところ、このモデルをそのまま用いることで、quinidine, verapamilのマイクロドースから臨床投与量に至るまでの非線形性についても良好に予測することができた。さらに、同じ吸収の非線形性を持った吸収であっても、quinidineは、主にP-gpの飽和に寄与するが、verapamilについては、P-gp,CYP3A4両方の飽和が寄与するなど、関わっている分子の相対的な重要性が異なることを定量的に示すことができた。
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