体液のナトリウム(Na+)濃度は常に脳で監視されており、水分や塩分の摂取及び排出の制御を通じて135~145 mMに厳密に維持されている。我々の研究から、脳において体液中のNa+濃度上昇を検出するセンサーがNaxチャンネルであることがわかっている。本研究では、細胞外環境のエンドセリンの濃度が高まると、NaxはエンドセリンB型受容体(ETBR)を介した調節を受け、平常時のNaレベルでも開口するようになることを報告した。Naxは、末梢神経系では非ミエリン化シュワン細胞に発現しているが、末梢神経系の軸索切断後における軸索の再伸長過程において、重要な役割を担っていることが明らかになった。さらに、脳弓下器官のアンジオテンシンII発現細胞が投射する神経核を同定し、オプトジェネティクス等を利用した行動解析を通じ、塩分摂取行動との関わりを明らかにした。さらに、大脳皮質と扁桃体の一部のニューロンにおいてNaxの発現を確認した。ニューロン由来の株化細胞に発現させたNaxを機能解析し、グリア細胞に発現するNaxと同様にNa+レベル感受性を示すことを明らかにした。水分欲求性に関しては、浸透圧センサー候補分子であるTRPチャネルの遺伝子欠損マウスについて水分欲求性の発現における役割について検証した。さらに、脳室周囲器官に特異的に発現する分子を明らかにし、新たな浸透圧センサーを見出すための基盤となるデータを得ることができた。現在投稿準備中の成果が多いが、研究については、以上のとおり、当初の計画を超えて進展した。
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