研究課題
近年、約30%のヒト遺伝子でRNAポリメラーゼII(Pol II)が転写開始直後に一時停止していることがわかり、遺伝子発現において転写伸長の制御が非常に重要な役割を果たしていることがわかってきた。Pol IIの一時停止が解除されPol IIが新生RNAの合成を再開するためには転写伸長因子が遺伝子上にリクルートされることが必要である。代表者はこれまでにメディエーター複合体のサブユニットMed26が転写伸長因子複合体“SEC”を遺伝子上にリクルートすることを明らかにした【Takahashi H, et al. Cell 2011】。本研究では、Med26がSECをリクルートする標的遺伝子を明らかにするため、Med26とSECのChIPシークエンス解析を行っている。さらに、Med26に結合するもう一つの転写伸長因子複合体“LEC”も同定し、Med26がLECをsmall nuclear RNA遺伝子領域へとリクルートし、それらの発現を制御することを明らかとした。また、SECのサブユニットのELL、AF4、AF9やENLの遺伝子はMLL遺伝子と混合型急性白血病で染色体転座がみられる。混合型急性白血病においては、転座の結果生じたMLL融合タンパク質がSECをHox遺伝子座に異常にリクルートし、その遺伝子の発現を異常に亢進させることから、メディエーター複合体もPol IIと共に(Med26とSECとの結合を介して)Hox遺伝子領域に異常にリクルートされている可能性が考えられた。現在、REH細胞と混合型急性白血病細胞(HB1119細胞:MLL-ENLを発現、MV4-11細胞:MLL-AF4を発現、THP-1細胞:MLL-AF9を発現)を用いてChIPシークエンス解析を行い、Med26を含むメディエーター転写複合体がPol IIと共にどのような遺伝子領域にリクルートされているのかに関して、明らかにしようとしている。
2: おおむね順調に進展している
生化学的解析や細胞生物学的解析は順調に進行している。次世代シークエンサーを用いたChIPシークエンス解析は、サンプル精製に多くの実験条件の設定が必要であることや、実際のシークエンス解読を外部の共同研究機関で行っているなどの理由から、通常の実験よりも多くの時間を要している。
混合型急性白血病細胞などの血球系細胞において、Med26の発現を抑制するために、今後はレンチウイルスを用いたノックダウン法を行う予定である。また、混合型急性白血病細胞において、Med26をノックダウンした時に、どのような遺伝子の発現が減少するのかを網羅的に明らかにするために、RNAシークエンス解析を行う予定である。
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Oncogene
巻: In press ページ: In press
Journal of Neurology
巻: 261(1) ページ: 224-226
10.1007/s00415-013-7134-5
http://www.hucc.hokudai.ac.jp/~d20505/takahashi/index.html