研究課題/領域番号 |
24689017
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研究機関 | 独立行政法人理化学研究所 |
研究代表者 |
金田 勇人 独立行政法人理化学研究所, 統合生命医科学研究センター, 上級研究員 (40528212)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 幹細胞老化 / 組織幹細胞 / 老化 / microRNA / 間葉系幹細胞 |
研究概要 |
体性幹細胞は生涯にわたり細胞を供給し続け、組織恒常性の維持において重要な役割を担っている。しかしながら、老化に伴ってその分化能・自己複製能などの機能に変化が生じる、“幹細胞老化”が起こっていることが分かってきた。この幹細胞老化を制御することができれば、加齢性機能障害、免疫機能低下などの回復を通してあらゆる疾患への予防・治癒、さらには寿命延長などの効果が期待できる全く新しい再生医療技術の創生へとつながると考えらえる。そこで、体性幹細胞に共通する幹細胞老化の分子メカニズムの解明・制御し、更には幹細胞老化が個体レベルの老化現象に与える影響を明らかにすることが本研究の目的である。 初年度に実施した2種類の幹細胞における若齢・老齢時の遺伝子およびmiRNAの網羅的発現解析から、幹細胞に共通する老化の分子メカニズムを調べてきた。その結果、共通の発現パターンを示す多数の候補遺伝子・miRNAのリストを得た。また、Pathway解析を実施し、重要と思われるシグナル伝達経路を複数同定することが出来た。これらを元に新しい老化メカニズムの仮説が得られたため、遺伝子改変マウスの作製を行いながら、主に間葉系幹細胞を用いて機能解析を行っている。一方、神経幹細胞におけるコンピテンス制御機構の分子メカニズムに関する研究結果をPNAS誌に発表した。 Naka-Kaneda H, et al. The miR-17/106-p38 axis is a key regulator of the neurogenic-to-gliogenic transition in developing neural stem/progenitor cells. Proc Natl Acad Sci U S A 111, 1604-1609 (2014).
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
網羅的解析からのスクリーニングやPathway解析が進行し、新しい知見が少しずつ得られる段階に移行している。新しい老化メカニズムの仮説を得るに至っており、その検証のための遺伝子改変マウスの作製も進行している。さらに、研究の基礎となる神経幹細胞のコンピテンシーの制御に関する研究結果をPNAS誌から発表することができ、総合的に予定通り順調に進行していると判断できるから。
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今後の研究の推進方策 |
本課題開始当初に立てた仮説はおおむね予想通りの結果が得られてきている。網羅的解析の結果、当時未知であった部分が少しずつ明らかになってきており、それを元にした次の段階の仮説が得られており、幹細胞老化のメカニズム解明に迫ることが出来るのではないかと考えている。そのために、現在2種類の幹細胞のマイクロアレイおよびmiRNA qPCRアレイのデータしかないが、さらに多くの組織幹細胞の若齢・老齢比較データを集めることで、メカニズムが複数の幹細胞で共通する根幹的なものであるかどうか検証する。また、このデータにより組織・個体レベルの老化についても重要な知見が得られるため、その点についても検証していく。
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次年度の研究費の使用計画 |
今年度は計画がやや早く進み、網羅的解析からのスクリーニング結果が得られ、新たに機能解析をする必要がある遺伝子を複数同定したことと、最初の計画からあった遺伝子改変マウス作製等が重なり、早期に実施すべきマウス作製を開始するため、残り2年分の基金分全額の前倒し請求を実施した。その結果、これらの実験を今年度に実施し、支払いを行うことが出来た。補助金分で行う計画であった実験についても、遅延することなく遂行されているが、実験量が若干減少したために次年度使用額として残る事となった。 当初の計画通り物品費として必要な試薬等の購入のために全額使用する。
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