研究課題
本研究では、様々な病態における低分子RNAの発現異常の分子基盤となる低分子RNA生合成経路の新規調節機構、および悪性腫瘍との関係を明らかにすることを目的とする。また、低分子RNAの作動機構をネットワークレベルでシステム的に理解することを目的とする。平成24年度では、まず、miRNAによる標的mRNAの抑制効果を複数の内在性miRNAの発現量が変動する状況に外挿することが可能であるかを検討した。このために、GSEA-FAME analysis(GFA)という新規解析手法を開発し、癌のトランスクリプトームにおいてmiRNAがmRNA発現に与える負の影響が広範囲に観察されること、この原理を応用して、より頑健な新規バイオマーカーや新規治療標的をゲノムワイド発現解析から抽出できる可能性を明らかにした(Nucleic Acid Res, 41, e62)。また、これまでにMCPIP1と呼ばれるribonucleaseがmiRNAの生合成を抑制することを見出しているが、平成24年度では、MCPIP1によるmiRNA前駆体の分解を抑制するRNA結合タンパクLaとMCPIP1の関係について、乳癌の遺伝子発現データを解析し、DicerおよびLaとMCPIP1が拮抗関係にあることを見出した(J Biol Chem, 288, 723-736)。平成25年度では、GFA解析をT細胞リンパ腫の網羅的遺伝子発現解析データに拡張し、各リンパ腫サブタイプが特徴的なmiRNA活性パターンを示すことを明らかにするとともに、NPM-ALK陽性の悪性リンパ腫(未分化大細胞型リンパ腫)で発現異常が認められる複数のmiRNAの同定に成功し、mRNA発現データの解析からmiRNA―mRNAネットワークを類推できる可能性を新たに見出した(Leukemia, 27, 2107-2111)。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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