研究課題/領域番号 |
24689021
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研究種目 |
若手研究(A)
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
榎本 篤 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20432255)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エンドサイトーシス / アクチン細胞骨格 / Girdin / ダイナミン / トランスフェリン受容体 / カドヘリン |
研究概要 |
本研究の目的は、Girdinおよびそのファミリー分子の研究を基点にしてエンドサイトーシスの特異的制御機構を解明するとともに、その制御機構が癌・精神疾患の分子病態において果たす役割を明らかにすることである。 これまでにRNA干渉法によってGirdinをノックダウンしたHeLa細胞において、トランスフェリン受容体のエンドサイトーシスは抑制されるが、EGF受容体のエンドサイトーシスは影響を受けないという興味深い結果を得ている。本年度はさらにGirdinがインテグリンβ1やE-カドヘリン等の多様な分子のエンドサイトーシスに与える影響を検討した。またエンドサイトーシスの空間的制御の問題について、全反射蛍光顕微鏡(TIRF)を用いて、各分子の動態を固定細胞およびタイムラプスイメージングにより観察した。その結果、Girdinはインテグリンβ1のエンドサイトーシスは制御しない一方で、E-カドヘリンのエンドサイトーシスを制御するという結果が得られ、Girdinは分子(カーゴ)特異的な膜輸送を制御することが明らかになった。またTIRFを用いた解析によって、Girdinは細胞の中心部分底面におけるエンドサイトーシスは制御するが、細胞の辺縁部では制御しないことも明らかにした。 また、これまでに精製タンパクを用いたin vitroGTPaseアッセイにより、GirdinのN末端ドメインがダイナミンと結合し、そのGTPase活性を促進することを示している。本年度はN末端ドメインの中心部(85アミノ酸)にダイナミン制御機能があることを明らかにした。さらに上記の活性に重要なアミノ酸残基を同定するために、N末端ドメインに各種点変異および欠失を導入し、それぞれの変異体の組み換え蛋白質を精製した。なお、本実験の一部は聖マリアンナ医科大学の三好洋講師と共同で実施した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Girdinの結合分子として同定したダイナミンについて、その結合様式を生化学的に詳細に解明することができた。またGirdinが膜分子の種類特異的にエンドサイトーシスを制御することが明らかとなり、本研究の目的としているエンドサイトーシスの特異的制御機構の一端を解明することができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後は研究計画に従い、各種変異体の作成とそのダイナミンGTPase活性に与える影響の検討、またその細胞生物学的な意義、特にがん細胞や神経細胞の細胞運動に与える影響を検討する。また本研究の目標の一つである構造・活性相関の解明にむけて、Girdin/ダイナミン複合体の精製・結晶化の共同研究を具体的にすすめる段階に入る予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は各種変異体の作製とその活性測定実験が予定通りに進展せず、それらの経費を次年度に繰り越した。次年度は本助成金を使用して上記実験を行う他、変異体導入細胞の表現系解析に充当する予定である。
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