研究課題/領域番号 |
24689021
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
榎本 篤 名古屋大学, 医学(系)研究科(研究院), 准教授 (20432255)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | エンドサイトーシス / アクチン細胞骨格 / Girdin / ダイナミン / トランスフェリン受容体 / カドヘリン |
研究概要 |
本研究の目的はGirdinファミリーの研究を基点にしてエンドサイトーシスの制御機構を解明するとともに、癌・精神疾患の分子病態において果たす役割を明らかにすることである。これまでにGirdinはインテグリンやEGF受容体のの取り込みは制御せず、E-カドヘリンやトランスフェリン受容体の取り込みを制御するという結果が得ている。またGirdinのN末端ドメインにダイナミンへの結合活性及びその活性制御機能が存在することを明らかにした。 今年度はN末端ドメイン変異体の組み換え蛋白質を用いてダイナミンの活性制御に与える影響を検討したところ、63番目と84番目のアルギニンをアラニンに置換した変異体においてダイナミン活性化機能が有意に低下することを示した。また変異体をHeLa細胞に発現させた場合に、トランスフェリン受容体の取り込みが有意に低下することが明らかとなった。 Girdinによる選択性エンドサイトーシスの制御がどのような病態と関与するか検証するため、本機構の異常が上皮細胞の癌化過程でみられる極性の破綻につながる可能性について検証した。上皮細胞においてGirdinをノックダウンしたところ、本来は基底側膜に中心に局在するE-カドヘリンやトランスフェリン受容体の局在異常が観察された。このことは過去に報告されている癌におけるGirdinの発現異常が上皮細胞の極性の異常化に関わっていることを示唆するものである(投稿中)。また私達はGirdinのノックアウトマウスでは脳室下帯で新生される神経芽細胞の集団移動の異常がみられ、Girdinが精神疾患の病因に関わる分子であることを報告しているが、同マウスの組織切片において細胞間接着部位におけるN-カドヘリンの局在異常が存在することも見出した。今後はGirdinによる選択的エンドサイトーシスの制御が神経芽細胞の移動に関わる可能性について検証する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
Girdinとダイナミンの結合についてその結合の責任部位を生化学的に詳細に解明することができた。またGirdinが選択的エンドサイトーシスを制御する分子であり、同機構の異常が上皮細胞の癌化の過程で観察される極性破綻と関わっている可能性について検証できた。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に従い、Girdinによる選択的エンドサイトーシスががん細胞の極性破綻や神経芽細胞の集団移動を制御している可能性について詳細に検討する。また本研究の目標の一つである構造・活性相関の解明にむけて、Girdin/ダイナミン複合体の精製・結晶化を連携研究者とともに具体的段階にすすめる予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度は神経芽細胞の集団移動におけるGirdinの選択的エンドサイトーシスの役割を検証する実験が予定通りに進展せず、それらの経費を次年度に繰り越した。 Girdinによる選択的エンドサイトーシスが神経芽細胞の移動に与える影響を検証するため、主にノックアウトマウスや変異体ノックインマウスの神経系組織の表現型解析や分子発現異常の解析のための費用に充当する予定である。
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