日本全国の事業場において、うつ病による休業者数は年々増加しており、その対応が重要視されている。病気休暇・休職などの就業規則、職場復帰支援体制などが整備されてきているが、実際にはこれらの内容は、事業場によって様々であり、復帰する労働者と受け入れる職場の双方にとって最適な制度とはどのようなものであるかの学術的な検討はいまだ不十分な状況にある。 そこで、本研究ではうつ病の病態をふまえた就業規則や職場復帰制度とうつ病による労働者の休職状況に関する情報を収集し、両者を総合的に検討することによって、うつ病の病態に基づいた現実的な病気休暇・休職制度を検討することを目的とした。 平成24年度に、パイロット調査により得られた結果を踏まえて全国規模でのアンケート調査を行った。この結果、金銭的補償期間と段階的復職制度は、休業日数に対して間接的に影響を及ぼしていたが、試し出勤の規定が休業日数を延長させる可能性が示唆された。これは試し出勤の規定が設定されていることにより、職場復帰前に職場復帰の判断等がより正確に行える可能性が考えられ、復職前の焦りによる不十分な復職を防ぎ、かつ不要に長い休養を防止することで、先行研究で示唆されて来た金銭的補償期間の休業日数に対する影響を補正している可能性が示唆された。 平成25年度は、質的研究を予定していたがインタビュー実施が困難となり、全国調査の解析を行うととともにインターネットでの追加調査を検討した。 平成26年度は、検討した休職経験者と非経験者における就業規則の認識の違いについてインターネットベースでの追加調査を行った。これら両調査から得られた結果をもとに、うつ病に適切に対応するために最適な就業規則を検討し、就業規則を変更するにあたっての貴重な学術データが得られた。
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