研究課題
細胞の分化・系列決定過程における系列状態の維持にはクロマチンの修飾やDNAのメチル化などのエピジェネティック制御機構が深く関与している。我々は最近、DNAのメチル化に重要な働きをするNp95がT細胞分化に必須であることを見いだした。そこで本研究では、Np95のT細胞分化における役割を解析することによって、T細胞系列への運命決定・維持にNp95を含めたDNAメチル化修飾がどのように関わっているのかを明らかにすることを目的とする。EBF1欠損造血前駆細胞をTSt-4/DLL1ストローマ細胞と共培養し、T細胞へ分化誘導を行った。ここへDnmt1の特異的阻害剤であるRG108を添加した。6日後に細胞を回収しFACSにより表面抗原マーカーを調べたところ、コントロールのDMSOを加えた細胞はDN2への分化が認められた。一方、RG108を加えた細胞もコントロールと同程度にDN2細胞が生成された。細胞数にも影響はなかった。このことは少なくとも多能前駆細胞からDN2へのT系列への決定過程においてDnmt1は必須でないことを示唆している。この分化誘導系でMeDIP-chip解析を行ったところ、どの遺伝子座においてもDNAメチル化はそれほど変化していなかった。Lckcre-Tgマウスを用いてT細胞特異的Dnmt1欠損マウスを作成したところ、DN3からDP段階へのT細胞分化過程に異常が認められた。従って、DNAメチル化はDN2までの運命決定には必須ではないが、それ以降の分化に重要であることが示唆された。
2: おおむね順調に進展している
本年度の研究計画通り、in vitroの培養系やT細胞特異的Dnmt1欠損マウスを用いてT細胞分化におけるDNAメチル化の役割を解析した。この解析により、Np95を含めたDNAメチル化機構がDN3以降のT細胞分化に重要であることが明らかとなった。
研究はほぼ実験計画通りに進んでいる。今後は論文にまとめることを念頭に必要な実験を行なっていきたい。
平成25年度は研究計画に基づき、MeDIP-seqを行い網羅的なDNAメチル化解析を行う予定であったが、予想外の困難に遭遇し、実験のセットアップに時間がかかり、すべての解析を終えることができなかった。MeDIP-seqによる解析とNp95のT細胞分化における標的遺伝子の同定、およびその成果発表を次年度に行うこととし、未使用額はその経費にあてることとしたい。
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