研究課題/領域番号 |
24689043
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
高村 史記 近畿大学, 医学部, 助教 (90528564)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 感染症防御学 / メモリーCD8T細胞 |
研究概要 |
インフルエンザウイルス感染・排除後の肺気道粘膜には莫大な数の抗原特異的メモリーCD8T細胞が長期間わたり蓄積することが知られており、これら粘膜滞在型メモリーCD8T細胞は再感染初期の防御免疫に重要な役割を果たしている。また、T細胞はウイルス株間で高度に保存された領域を認識エピトープとすることで交差反応性を示すことからも、メモリーCD8T細胞の肺粘膜移行メカニズムの解明は、CD8T細胞による防御免疫誘導型ワクチン開発の最重要課題である。我々は肺気道のメモリーCD8T細胞が活性化マーカーCD69を高発現していることに注目し、CD8T細胞がCD69を欠損すると肺気道への移行効率が減少することを見出した。CD69はスフィンゴシン1リン酸レセプター1(S1P1)を抑制することでリンパ球のS1Pに対する走化性を制御する。我々は、肺実質に移行したメモリーCD8T細胞はSIPIを発現することでS1Pの豊富なリンパへ流出するが、CD69発現がこの移行を妨げることで更に深部の肺気道に到達可能となることを突き止めた。更に、我々は肺実質から肺気道までのメモリーCD8T細胞の移行にケモカインレセプターCXCR6が重要な役割を果たしていることを突き止めた。つまり、肺気道ではSIP1及びCXCR6を介した2方向(リンパ及び肺気道)の移行シグナルが拮抗した形(通常はSIP1優位)で存在するが、CD69がS1P1シグナルを抑制することでCXCR6を介したメモリーCD8T細胞の肺気道への移行が促進されていることが明らかとなった。今後はこの調節機構(CD69発現)のきっかけと考えられている残存抗原をどのように誘導するかがワクチン開発の鍵となる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2012年9月にDavid Masopustらにより「通常我々が肺実質の細胞として扱っていた細胞群の90%以上が実は肺毛細血管内の細胞であり、その識別方法を発見した」という趣旨の論文が発表された。この研究に反論の余地は無く、研究代表者の研究の多くも肺実質の細胞を扱っているため、新たに発表された肺実質の細胞と毛細血管内の細胞を識別する手技を用いて大半の実験をやり直している。このため、予定より若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
11欄にて記載した新規解析法での再解析を速やかに済ませ、できるだけ早い段階でメモリーCD8T細胞の肺粘膜移行調節機構に関する論文を仕上げる。その後、CD69が及ぼすCD8T細胞プライミングへの影響の検討(申請書記載計画)に入るが、前述の研究(肺のメモリーCD8T細胞)進行過程にてVLA-1のメモリーCD8T細胞肺粘膜移行に関する新たな機構が明らかになるなど、次の研究への発展が期待される発見が得られているため、本研究の進行の妨げとならない範囲で採取可能な予備データをできる限り蓄積し、次の研究に備える。
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次年度の研究費の使用計画 |
上記のやり直し実験の影響もあり、当該年度使用予定であった消耗品が次年度の購入にずれ込むが、全体的にはおおむね申請書に記載された計画通りに使用予定である。従って、次年度予算は申請額プラス繰越額となる。
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