研究課題
インフルエンザウイルス感染・排除後の肺気道粘膜には莫大な数の抗原特異的メモリーCD8T細胞が長期間わたり蓄積することが知られており、これら粘膜滞在型メモリーCD8T細胞は再感染初期の防御免疫に重要な役割を果たしている。また、T細胞はウイルス株間で高度に保存された領域を認識エピトープとすることで交差反応性を示すことからも、メモリーCD8T細胞の肺粘膜移行メカニズムの解明は、CD8T細胞による防御免疫誘導型ワクチン開発の最重要課題である。我々は肺気道のメモリーCD8T細胞が活性化マーカーCD69 を高発現していることに注目し、CD8T細胞がCD69を欠損すると肺気道への移行効率が減少することを見出した。CD69はスフィンゴシン1リン酸レセプター1(S1P1)を抑制することでリンパ球のS1Pに対する走化性を制御する。我々は、肺実質に移行したメモリーCD8T細胞はS1P1を発現することでS1Pの豊富なリンパへ流出するが、CD69発現がこの移行を妨げることで更に深部の肺気道に到達可能となることを突き止めた。更に、我々は肺実質から肺気道までのメモリーCD8T細胞の移行にケモカインレセプターCXCR6が重要な役割を果たしていることを突き止めた。つまり、肺気道ではS1P1及びCXCR6を介した2方向(リンパ及び肺気道)の移行シグナルが拮抗した形(通常はS1P1優位)で存在するが、CD69がS1P1シグナルを抑制することでCXCR6を介したメモリーCD8T細胞の肺気道への移行が促進されていることが明らかとなった。今後はこの調節機構(CD69発現)のきっかけと考えられている残存抗原をどのように誘導するかがワクチン開発の鍵となる。
25年度が最終年度であるため、記入しない。
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