[研究の目的・意義] 申請者はこれまでにエキソーム解析を主軸とした遺伝性疾患における新規原因遺伝子の研究を進めてきた。その中で単純にDNAを調べるだけでは原因が不明なままの症例が多く存在することに気付いた。本申請はこのような症例のRNAレベルで起きている配列変異・発現異常が遺伝子疾患の発症機序にどう関わっているかを明らかする。 1. 特定のアレルだけが発現している遺伝子の同定: RNA/DNAのデータを比較することで、片アレルに偏って発現している遺伝子候補を複数抽出できた。この中には既に偏りを受けると知られている遺伝子が少なくとも10以上含まれていた。本年度の解析で複数サンプルで同様の偏りが見出された候補もあり、新規のアレル特異的発現、またはインプリント遺伝子の同定に有用なデータである。 2. RNA レベルで置換されている塩基の同定: 上記の解析とは逆にRNAレベルで初めて塩基置換が入ったと考えられる候補の同定も引き続き行った。シーケンスの性質上、候補内での疑陽性率が高いため、本年度内に発表された解析プロトコールも参考にしつつ、候補の絞り込みを行った。 3. 複合データでの変異解析: 2と並行して、実際の検体で疾患の原因となりうるデータの探索を行った。 本年度ではアレル特異的発現をする遺伝子候補の中から、ミトコンドリア関連遺伝子であるもの、かつ実際の検体にレアバリアントが存在するものを探索した。 全体的に想定した形でデータを得る部分は進められている。得られた遺伝子発現データは疾患原因遺伝子の探索においても有効に活用できている。解析の優先順序を変更し、疾患発生機序にインパクトを与えやすい特定アレルだけが発現している遺伝子の解析を先に進めた (上記3)。ここで得られた候補については実際に発症の原因となるものか検証実験を進めていく。
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