研究課題
若手研究(A)
細胞膜に局在するタンパク質や脂質のほとんどは、糖鎖修飾を受けてその機能を獲得する。なかでもN-Acetylglucosaminyltransforase-V(GnT-V)は発がん・がんの転移時に上昇してくることが知られており、がんと関連の深い糖転移酵素である。我々はがんの微小環境におけるGnT-Vの役割を解析するために、N-アセチルグルコサミン転移酵素・V(GnT-V)ノックアウトマウス(GnT-V KO)を用いて解析した。近年、がんに浸潤してくるマクロファージ:Tumor Associated Macrophage(TAM)はM2マクロファージの性質を持ち、がんに対する免疫を抑制し、浸潤・転移に有利な環境を作っていることが報告されている。よって本年度はマクロファージにおけるGnT-Vの役割をマクロファージのM1、M2分化を中心に検討した。GnT-V KOマウスより骨髄マクロファージを採取し、M2活性化刺激(IL-4)を添加すると、GnT-V KOマウス由来骨髄マクロファージは野生型マウス由来骨髄マクロファージと比し、M2マーカーであるFizz-1、Ym-1、CD206及びArginase Iの発現が低下した。また、GnT-V KOマウス由来骨髄マクロファージはM2活性化の際に重要な経路であると報告されているPI3K-AKTシグナルも低下していた。GnT-Vにより糖鎖修飾を受けるタンパク質のなかで、M2マクロファージの活性化に関与すると考えられる候補タンパクとして現在CD98、TGF-βレセプター、インテグリンなどを考えており、その糖鎖修飾に伴う機能変化については解析中である。当該年度の結果より、GnT-VはマクロファージのM2活性化を制御することにより、がんの浸潤を促進している可能性が考えられた。本研究はこれまで報告されてきたがん細胞に発現しているGnT-Vだけでなく、微小環境を構成するマクロファージの発現するGnT-Vもがんの浸潤において重要な役割を果たしている可能性を示唆する。
2: おおむね順調に進展している
本年度はがん微小環境を構成する細胞のなかでも重要な役割をはたすマクロファージにおけるGnT-Vの役割を解明することが出来たために、来年度以降のin vivoにおける解析に進むことができる。実験開始時に考えていた可溶型GnT-Vの微小環境への影響に関しては現在のところ、有意な結果は得られていない。
GnT-Vが、がんの微小環境に及ぼす影響を(1)GnT-Vそのものによる影響(全長型GnT-V)と(2)可溶型のGnT-Vの二つの可能性から考えていたが、(1)による可能性が高いことが判明した。よって来年度は全長型のGnT-Vマウスを中心に解析し、当初予定していた可溶型GnT-Vマウスは用いない予定である。
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