研究課題/領域番号 |
24689048
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
芳賀 昭弘 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (30448021)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | コーンビームCT / デュアルエナジーCT / 光電効果 / コンプトン散乱 / キロボルトX線 / メガボルトX線 |
研究概要 |
本研究では、放射線治療装置における診断用ビームのキロボルト(kV)エックス線と放射線治療用ビームのメガボルト(MV)エックス線の投影像を使ったコーンビームCT(CBCT)による、臓器位置検証システムと電荷密度分布推定法の開発を目指している。当該年度において、前者に対しては、治療ビームによる限られた領域の照射部位の再構成技術を開発し、再構成された画像を診断用CT上に重ね合わせることによって、治療部位の臓器位置を検証するハイブリットCTシステムを構築した。これに関連した治療中のkVエックス線の投影像による4次元臓器位置検証システム開発で、アメリカ医学物理学会の口頭発表に選ばれた。後者については、光電効果とコンプトン散乱の理論計算データベースに基づいた回帰式により、異なるエックス線エネルギーのCTから得られる線減弱係数比と有効電荷分布の変換式を導出し、電荷密度分布を推定する方法を開発することができた。 治療ビームを用いた再構成画像では、照射範囲以外の領域が再構成画像に寄与するため、マスク補正を施した。また、再構成される領域に寄与するX線フルエンスの影響も検討した(フルエンス補正)。結果、治療部位の可視化の目的では、マスク補正が主要な役割を示し、また、フルエンス補正は、画像の均一性を高める効果を示すことがわかった。 電荷密度分布推定法では、kVとMVというエネルギーレンジが離れたデュアルエナジーX線が精度を高めることを示した。また、線減弱係数を精度良く求めるため、放射線治療装置に設置されたCTシステムを利用するには、散乱補正を施すことが重要であることを示した。 以上の成果は、次年度において、国内外の学会及び論文で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当該年度に予定していた開発は、順調に終了した。放射線治療装置に併設したkVエックス線投影システムと治療用MVエックス線投影システムをリンクする手法を開発し、それぞれの投影像から散乱補正を加味した逐次近似再構成アルゴリズムを適応することで、各エネルギーレンジにおける被写体物質の線減弱係数の推定値の精度を高め、有効電荷分布の取得が実現できた。一方、有効電荷分布の推定に用いるkV-MVエックス線エネルギー間の線減弱係数比と有効電荷分布の変換式に使用した光電効果とコンプトン散乱の理論計算データベースに関し、本研究を通してその精度についての新しい知見が得られた。これは本研究から派生した萌芽的研究として発展する可能性がある。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き申請書の予定に沿って研究を推進する。当該年度まで実現できたデュアルエナジーCTによる有効電荷分布の推定法は、使用したkVとMVのエックス線が単色であると仮定し、その実効エネルギーは、水ファントムに対する再構成されたCT値と線減弱係数の理論式から一意に同定した。次年度では、使用している放射線治療装置のkV及びMVのエックス線スペクトルをモンテカルロ法により決定し、デュアルエナジーCTによる有効電荷分布推定精度を高めることに着手する。また、診断用CT装置の利用も検討する。有効電荷分布推定精度は、有効電荷分布を考慮した放射線治療に対する線量計算を実施することで評価する。一方、本研究の派生研究として、光電効果とコンプトン散乱の理論計算データベース再構築の検討を始める。これは、粒子輸送モンテカルロ計算で使用されている理論データベースの再構築につながる放射線科学分野の基礎であり基盤となる研究であると考えている。
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