研究課題/領域番号 |
24689049
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研究機関 | 浜松医科大学 |
研究代表者 |
小川 美香子 浜松医科大学, メディカルフォトニクス研究センター, 准教授 (20344351)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 動脈硬化 / 分子イメージング / 不安定プラーク / PET |
研究概要 |
動脈硬化病変に生じる不安定プラークは脳・心筋梗塞の原因となるため、早期に検出し治療を行うことが重要である。 平成25年度は、各PETイメージング剤の特性評価を行った。代謝性イメージング剤である[18F]FDGと[11C]Cholineの動脈硬化病変への集積について、まず、インビトロにて検討を行ったところ、両薬剤ともマクロファージへのへの取り込みは認めたが、[18F]FDGにおいては培地中のグルコース濃度に大きく影響を受け、高グルコース条件では、その取り込み量は[11C]Cholineよりも低いのとなった。また、昨年度までに[18F]FDGは動脈硬化病変をより不安定化させると言われているM1マクロファージによくとりこまれることを見いだしていたが、この傾向は[11C]Cholineでは認められなかった。さらに、apoEノックアウトマウスを用い、インビボでの検討を行った結果、絶食条件下では[18F]FDGの病変への高い取り込みが認められたが、正常血管への取り込みもやや高く、病変/正常部位の比は非絶食条件のほうが却って高くなり、絶食条件下では[11C]Cholineのほうが[18F]FDGより病変/正常部位比は高いものとなった。このことから、糖尿病患者など、血糖コントロールの難しい対象においては、[11C]Cholineのほうが適している可能性が示された。ただし、さらに現在、WHHLウサギを用いて検討を行っているが、[11C]Cholineでは肝臓・心臓への高集積を認めており、また、取り込みの絶対量がやや少なく、半減期も短いことから、PETにて微小病変を検出するのは困難かもしれないとの、初期結果が得られている。一方で、比較検討している、[18F]FDG, [18F]FMISO, [18F]NaF, [11C]PK11195においては、WHHLウサギでの不安定プラーク検出に関し、良好な結果を認めているが、個体差が大きいことが判明した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初予定どおり、イメージング剤の集積に血糖値が及ぼす影響にういて、インビトロ・インビボの両面から検討し、[18F]FDGの利点・欠点を明確にすることができた。また、その他各種イメージング剤について、同一個体における検討を行うことで、各イメージング剤により、描出可能な動脈硬化の病変ステージが異なる可能性を示した。特に、[18F]NaFにおいてはかなり良好な画像を得ることに成功している。これまでに議論となっているCTにて捉えられる石灰化と大きな相関は、今のところ得られていない。また、これまで報告がなされていない低酸素イメージング剤[18F]FMISOによっても、動脈硬化病変が捉えられる個体が認められ、今後の詳細検討が必要と判断された。[11C]Cholineは、マウスでは良好な結果を示したが、動脈硬化がイメージングされる個体はほとんど居なかった。これは、正常組織からのバックグランドが高いことが影響したと考えられ、実際のイメージングでの検討の必要性を再確認した。また、MRIについては、明確に描出するには必要な造影剤の濃度がかなり高く、ヒトでの利用においては毒性が懸念されることから、造影剤を用いない形態イメージングでの適用が妥当と考えられた。 以上のように、当初の予定どおりに研究は進行しており、本年度までの結果を基に、来年度には、同一個体にてさらに経時的に検討を重ねていくことで、一貫した成果になると期待される。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度には、これまでの結果をもとに、WHHLウサギを用い同一個体にて、[18F]FDG, [18F]FMISO, [18F]NaF, [11C]Choline, [11C]PK11195を用いて「経時的」に検討を重ねる。WHHLウサギは月齢によって不安定プラークの成熟度が異なることが知られており、さらにヒトの病変に酷似していることから本研究の目的に合致する。なお、PET撮像時には大動脈の位置同定のため造影CT撮像も併せて行い、石灰化の評価を同時に行う。MRIに関しては、造影剤投与前にT1, T2強調画像を撮像する。撮像後、大動脈を摘出し切片を作成し、各種染色(マクロファージ・マッソントリクローム染色、Oil-redO染色、Azan染色、HE染色)を行って病理像と比較することで、検出感度、特異度の面から検証を行う。 また、治療薬剤が各イメージング剤の取り込みに与える影響を検討する。スタチン系、フィブラート系、抗酸化剤など既存作用機序の薬剤に関して検討を行うとともに、PPARγアゴニストなどの新規作用機序を持つ薬剤についても検討を行う。まず、培養マクロファージを用いた検討を行い、apoEノックアウトマウス、WHHLウサギと段階的に検討を重ねる。
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次年度の研究費の使用計画 |
ウサギでの検討を行うにあたり、条件設定を行うためには当初予定より少数の個体にて検討を行うことが可能であったこと、また、ブリーダーに若齢の個体しかおらず、低額となったことが挙げられる。 次年度には、病理標本との比較を行うため、定期的なウサギのsacrificeが必須であり、また、より高齢で実験にすぐに利用できる個体を購入する予定である。
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