研究実績の概要 |
動脈硬化病変に生じる不安定プラークは脳・心筋梗塞の原因となるため、早期に検出し治療を行うことが重要である。これまでに、様々な生体分子をターゲットとした不安定プラーク分子イメージング剤が開発されているが、プラークの早期特異的検出・治療効果評価に着目した比較検討はなされていない。そこで本研究では、不安定プラークの臨床診断・薬物治療効果評価を合目的的に施行するためのシステムの構築を目指している。 平成26年度は、[18F]FDG, [18F]FMISO, [18F]NaF, [11C]PK11195, [11C]Cholineについて、PETの非侵襲性を生かし、一匹の個体にて1年間経時的に検討を行った。WHHLウサギは月齢によって不安定プラークの成熟度が異なることが知られており、さらにヒトの病変に酷似していることから本研究の目的に合致する。なお、PET撮像時には大動脈の位置同定のため造影CT撮像も併せて行い、石灰化の評価を同時に行うこととした。MRIでのT1, T2強調画像を撮像も合わせて行い、PETの検出能に関する比較を行った。 この結果、[18F]FDG, [18F]NaF, [11C]PK11195においては、動脈硬化病変が画像化される個体が認められた。また、14か月齢と24か月齢において集積が変化しており、それぞれの薬剤の分布も一致する場所と一致しない場所が認められた。また、特に14か月齢においては必ずしも[18F]NaFとCTで観察された石灰化は一致していなかった。 画像撮像後、大動脈を摘出し切片を作成し、各種染色(マクロファージ・マッソントリクローム染色、Oil-redO染色、Azan染色、HE染色)を行って病理像と比較し検討したところ、MRIで認められる脂質の蓄積だけでは評価を行うことが難しく、PETの情報を加味した総合的な評価が必要であることが判った。本研究で得られた病理データを基に、今後も病理の専門家とも協力し解析を進めていく予定である。
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