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2012 年度 実績報告書

p53制御によって正常組織への副作用を軽減する新規放射線防護剤の開発

研究課題

研究課題/領域番号 24689050
研究種目

若手研究(A)

研究機関広島大学

研究代表者

森田 明典  広島大学, 原爆放射線医科学研究所, 助教 (90334234)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2016-03-31
キーワードp53阻害剤 / 放射線防護剤 / アポトーシス
研究概要

平成24年度は、まず培養細胞を用いて低毒性亜鉛キレート性p53阻害剤の活性評価を実施した。特に本年度は、先行研究で検討が進んでいた三座以上の配位子でなく、これまで未検討であった二座配位性の亜鉛キレート化剤を中心に放射線防護活性評価、およびp53転写に対する作用を検討した。その結果、優れた放射線防護効果を示す化合物が4つ発見された。その内の一つである8-キノリノール誘導体KH-3(5-chloro-8-quinolinol)は、アポトーシスを抑制するp53標的遺伝子、p21の転写を亢進させ、アポトーシスを誘導するp53標的遺伝子、PUMAの転写は抑制するという、p53転写活性への修飾作用を示すことが明らかとなった。また、p53-shRNA導入によってp53をノックダウンした細胞株、およびp53ノックダウン細胞株にshRNA抵抗性のp53を再導入した細胞株を用いた感受性比較試験から、KH-3が放射線細胞死抑制効果を発揮するためにはp53が必須であることも明らかとなった。現在、KH-3による放射線細胞死抑制効果の詳細なメカニズム解析と動物実験による放射線防護活性評価試験の準備を進めているところである。
動物実験に関する研究成果としては、新たにマウス全身照射「後」にバナデートを投与することによって放射線障害緩和剤としての活性評価を行った。その結果、照射後の造血機能障害、生存率に対する明らかな改善効果が認められ、バナデートが放射線防護剤としてだけでなく、放射線障害緩和剤としても機能することが明らかとなった。予期のできない被ばく事故への応用も期待される成果である。また、担がんマウス作製において、レシピエントとなるヌードマウスの親系統に当たるBALB/cマウスを用いて、バナデートの放射線防護効果と毒性試験も実施し、全身照射実験における最適なバナデート反復投与量と投与回数を決定した。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

本研究実施予定項目の一つである「亜全身照射モデルを用いたマウス腸管のバナデートによる耐容線量増加比の検討」では、骨髄死を回避し、腸管への影響に焦点を絞ることを目的とした「亜全身照射モデル」によって、腸管に対する放射線防護剤の活性評価を行うが、平成24年度は、前脚部の骨髄を保護するための鉛遮蔽具・アクリル固定具(マウス遮蔽固定具)の設計、マウス遮蔽固定具が想定額を超えたための当該助成金の前倒し支払い請求および発注、所属機関動物実験計画書申請と承認、施設利用登録、および動物実験スペースの確保に時間を要した。

今後の研究の推進方策

動物実験実施の準備が全て整ったことから「亜全身照射モデルを用いたマウス腸管のバナデートによる耐容線量増加比の検討」は、平成25年度から実施する。培養細胞を用いた放射線防護剤活性評価の結果をより重視し、動物実験で使用する試行化合物数を厳選することで、他の研究計画への影響を最小限にとどめたい。

次年度の研究費の使用計画

平成25年度は、「亜全身照射モデルを用いたマウス腸管のバナデートによる耐容線量増加比の検討」を行い、最適なバナデート反復投与方法と分割照射条件を決定した後に「分割照射法による担がんマウスの腫瘍治癒効果の検証」を実施、検討する。また、「p53阻害性のハイブリッド化合物のデザイン改良、処理・投与方法の検討」については当初の予定通り平成25年度に実施する予定であるが、検討する化合物については平成24年度に得られた新たな研究結果から、対象とする試行化合物を複数追加して検討したい。

  • 研究成果

    (8件)

すべて 2013 2012 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (5件) 備考 (1件)

  • [雑誌論文] Sodium orthovanadate (vanadate), a potent mitigator of radiation-induced damage to the hematopoietic system in mice.2013

    • 著者名/発表者名
      B. Wang, K. Tanaka, A. Morita, Y. Ninomiya, K. Maruyama, K. Fujita, Y. Hosoi, and M. Nenoi.
    • 雑誌名

      Journal of Radiation Research

      巻: (in press)

    • DOI

      10.1093/jrr/rrsl40

    • 査読あり
  • [雑誌論文] Inhibition of DNA-dependent protein kinase promotes ultrasound-induced cell death including apoptosis in human leukemia cells.2012

    • 著者名/発表者名
      Y. Furusawa, Y. Fujiwara, M. A. Hassan, Y. Tabuchi, A. Morita, A. Enomoto, and T. Kondo.
    • 雑誌名

      Cancer Letters

      巻: 322 ページ: 107-112

    • DOI

      10.1016/j.canlet.2012.02.020

    • 査読あり
  • [学会発表] p53を標的とする放射線防護剤の探索と機構解析2013

    • 著者名/発表者名
      有安真也
    • 学会等名
      日本化学会第93春季年回
    • 発表場所
      立命館大学びわこ・くさつキャンパス(滋賀県)
    • 年月日
      2013-03-25
  • [学会発表] 一時的にp53を選択的に阻害する放射線防護剤の設計及び合成2012

    • 著者名/発表者名
      葛岡朋代
    • 学会等名
      第56回日本薬学会関東支部大会
    • 発表場所
      昭和大学旗の台キャンパス(東京都)
    • 年月日
      2012-10-13
  • [学会発表] p53を標的とする新規放射線防護剤の開発2012

    • 著者名/発表者名
      森田明典
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第55回大会
    • 発表場所
      東北大学川内北キャンパス(宮城県)
    • 年月日
      2012-09-07
  • [学会発表] p53に作用する8-キノリメール誘導体KH-3の作用機構解析2012

    • 著者名/発表者名
      高橋一平
    • 学会等名
      日本放射線影響学会第55回大会
    • 発表場所
      東北大学川内北キャンパス(宮城県)
    • 年月日
      2012-09-07
  • [学会発表] p53転写非依存性アポトーシス誘導経路に作用する8・キノリノール誘導体KH-13の作用機構解析2012

    • 著者名/発表者名
      森田明典
    • 学会等名
      第50回日本放射線腫瘍学会生物部会学術大会
    • 発表場所
      健康文化村カルチャーリゾート フェストーネ(沖縄県)
    • 年月日
      2012-06-30
  • [備考]

    • URL

      http://hutdb.hiroshima-u.ac.jp/seeds/view/675/ja

URL: 

公開日: 2014-07-16  

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